インプラント

インプラント治療が適さないケースとは?

インプラント治療が適さないケースとは?

インプラントは顎の骨に直接埋め込む治療法で、口腔内の状態や全身の健康状態によっては適さないケースもあり、無理に治療を行うとトラブルが発生する可能性もあります。インプラントが適さない具体的なケース、それぞれのリスクや代替治療についてご説明します。

インプラント治療とは?

歯を失ってしまった場合の治療法として、インプラントは非常に有効な選択肢の一つです。インプラント治療とは、顎の骨に人工の歯根(チタン製のネジ)を埋め込み、その上に被せ物を装着することで、失った歯を補う治療法です。

インプラントは、見た目の自然さや噛み心地の良さが魅力ですが、すべての患者さんが受けられるわけではありません。治療が適さないケースもあり、無理に施術をすると失敗する可能性が高まります。では、どのようなケースではインプラント治療が適さないのでしょうか?

▼インプラントについての詳しい解説はこちらへどうぞ

インプラントが適さないケースとは?

インプラント治療は、非常に優れた治療法ですが、すべての患者さんに適しているわけではありません。 体の状態や生活習慣によっては、インプラントが成功しにくいケースもあります。そこで、具体的にどのような場合にインプラント治療が難しくなるのか、詳しく解説していきます。

1. 全身疾患がある場合

インプラントは外科手術を伴う治療です。そのため、全身の健康状態が影響を及ぼします。特に以下のような疾患を持っている患者さんは、インプラント治療が適さない可能性があります。

糖尿病(特にコントロールが不十分な場合)

  • 血糖値の管理が不安定だと、傷の治癒が遅くなります。
  • 感染症のリスクが高まり、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が上がります。
  • インプラントが骨と結合する「オッセオインテグレーション」がうまくいかないことがあります。

高血圧

  • 血圧が高いと、手術中や術後の合併症のリスクが高まります。
  • 血圧のコントロールが不安定な患者さんは、手術時に急激な血圧上昇が起こることもあり、特に注意が必要です。

骨粗しょう症

  • 骨が脆くなるため、インプラントがしっかり固定されず、脱落するリスクがあります。
  • ビスフォスフォネート製剤を服用している方は、顎骨壊死のリスクも考慮する必要があります。

これらの疾患がある場合でも、適切な管理を行えばインプラントが可能なケースもあります。主治医と相談しながら、安全な治療計画を立てることが重要です。

2. 顎の骨が不足している場合

インプラントは、顎の骨にしっかりと埋め込まれることで安定します。 しかし、骨の量や質が不足していると、インプラントがしっかりと固定されず、治療が難しくなることがあります。

顎の骨が不足する主な原因

歯を失ったまま長期間放置
  • 歯を失うと、顎の骨は徐々に吸収され、痩せてしまいます。
  • 骨が足りないと、インプラントがしっかりと固定できなくなります。
重度の歯周病
  • 歯周病が進行すると、歯を支える骨が溶けてしまいます。
  • インプラントを支えるだけの骨が残っていないと、治療が難しくなります。

解決策としての骨造成治療

顎の骨が不足している場合でも、骨を増やす治療を行えばインプラントが可能になるケースがあります。

  • GBR(骨再生誘導法):人工の膜を使って骨の再生を促す方法。
  • ソケットリフト・サイナスリフト:上顎の骨が足りない場合に、骨を増やす手術。
  • 骨移植:他の部位から骨を採取して移植する方法。

これらの処置を行うことで、顎の骨を補強し、インプラントをしっかり固定できるようになります

3. 歯周病が進行している場合

インプラント治療を成功させるためには、健康な歯茎と骨が必要です。 しかし、歯周病が進行していると、以下のような問題が発生します。

インプラントを支える骨が不足する
  • 歯周病は顎の骨を溶かしてしまうため、インプラントをしっかり固定できなくなります。
術後の感染リスクが高まる
  • 歯周病菌がインプラント周囲に感染し、「インプラント周囲炎」を引き起こす可能性があります。

対策としての歯周病治療

  • スケーリング・ルートプレーニング:歯垢や歯石を徹底的に除去する。
  • フラップ手術:歯茎を切開し、歯周ポケット内の細菌を除去する。
  • 生活習慣の改善:正しい歯磨きを行い、歯周病の再発を防ぐ。

歯周病が治ってからでないと、インプラント治療は成功しにくいので、事前のケアが重要です。

4. 喫煙習慣がある場合

タバコを吸う方は、インプラントの成功率が低下するといわれています。喫煙は以下のようなリスクをもたらします。

インプラントと骨が結合しにくくなる
  • 喫煙による血流の悪化で、骨の再生が妨げられます。
術後の感染リスクが上昇
  • タバコの有害物質が口腔内の免疫を低下させ、細菌感染を起こしやすくなります。

喫煙者へのアドバイス

インプラント手術の前後で禁煙する
  • 最低でも手術の1ヶ月前から禁煙を開始し、術後も続ける。
どうしても禁煙できない場合は、歯科医と相談する
  • 禁煙をすることで、インプラント治療の成功率が高まり、長持ちしやすくなります。

インプラント治療が適さないケースについて解説しました。

  • 全身疾患(糖尿病・高血圧・骨粗しょう症)がある場合は注意が必要
  • 顎の骨が不足している場合は、骨造成治療を検討する
  • 歯周病が進行している場合は、先に治療を行う
  • 喫煙習慣がある方は、禁煙が推奨される

また、生活習慣も重要で、歯磨きの習慣が不十分な方や、歯ぎしり・食いしばりが強い方は、インプラントの寿命を縮める原因になります。インプラントを長持ちさせるためには、しっかりとした口腔ケアと生活習慣の見直しが必要です。

インプラントができない場合の代替治療

インプラントが適さない場合でも、他の方法で歯を補うことができます。

  • ブリッジ・・両隣の歯を削って被せ物をする治療法。
  • 入れ歯・・取り外し式の人工歯で、手軽に治療できる。
  • 部分矯正・・歯並びを調整して、他の治療法と組み合わせることも可能。

それぞれの治療法にはメリット・デメリットがあるため、患者さんの状態に合わせた選択が大切です。

インプラント治療を受けるために大切なこと

インプラント治療を成功させるためには、事前の準備と適切なケアが不可欠です。

  • しっかりとカウンセリングを受ける
  • 口腔内の健康を整える(歯垢や歯周病の管理)
  • 生活習慣の改善(禁煙・食生活の見直し)

適切な準備をすれば、多くの方がインプラント治療を受けることができます。歯科医とよく相談し、無理のない治療計画を立てることが重要です。

まとめ

インプラント治療が適さない様々なケースについて解説しました。ポイントを整理すると、

  • 全身疾患(糖尿病・高血圧・骨粗しょう症)がある場合は注意
  • 顎の骨が不足している場合は追加治療が必要
  • 歯周病がある場合は、治療を優先すること
  • 喫煙習慣はインプラントの成功率を下げる
  • 年齢や生活習慣も影響するため、総合的に判断すること

インプラント治療を検討している方は、まず歯科医院でしっかり相談し、ご自身に合った治療法を選びましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック