インプラント

子供はインプラント治療を受けられますか?

子供はインプラント治療を受けられますか?

この治療法は、歯を失った場合の選択肢の一つで、天然歯と見分けがつかないため、子供が歯を失った場合には良い選択だと思われがちですが、実際に子供はインプラント治療を受けられるのでしょうか?子供がこの治療を受けられるかどうか、リスクや代替治療法についてご説明します。

子供はインプラント治療を受けられる?

インプラント

結論から言うと、子供がこの治療を受けるのは基本的に難しいとされています。その理由は、顎の骨がまだ成長途中であるため、しっかり機能しない可能性が高いからです。

大人の場合、失った歯の代わりに人工歯根を埋め込むことで、見た目や咀嚼機能を回復できます。しかし、子供の場合は以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 顎の成長に伴い、人工歯根がずれてしまう
  • 隣の歯と噛み合わせが合わなくなる
  • 見た目に不自然な仕上がりになる可能性がある

人工歯根は骨としっかり結合するため、一度埋め込むと簡単に動かせません。そのため、成長途中の子供には向かないと考えられています。

成長途中の子供にインプラントが難しい理由

子供

なぜ子供には向かないのか、その理由を見ていきましょう。

1. 顎の成長が未完成

  • 子供の顎は成長途中であり、大人になるまで変化を続けます。
  • インプラントを埋め込んでも、成長によって位置が変わり、不適合が起こる可能性があります。

2. 噛み合わせの変化

  • 子供のうちは永久歯が生えそろう過程にあり、歯並びや噛み合わせが変化します。
  • インプラントは固定されているため、周囲の歯の変化に対応できません。

3. 治療の失敗リスク

  • 人工歯根には骨と結合する「オッセオインテグレーション」というプロセスが必要ですが、成長途中では適切に結合しにくいことがあります。
  • 無理に入れてしまうと、後々再治療が必要になるケースもあります。

以上の理由から、子供のうちは他の治療方法を検討する方が適切と考えられます。

子供の顎の成長はいつまで続く?

子供

子供の顎の成長は 個人差がありますが、一般的に男性は18~20歳、女性は16~18歳ごろまで続く とされています。成長期には、顎の骨が縦方向・横方向・奥行き方向に少しずつ発達し、最終的に大人の骨格へと変化します。

特に 思春期(10~15歳前後)は成長が活発な時期 であり、身長の伸びとともに顎の骨も大きくなります。

インプラントが埋め込まれるとどうなる?

インプラントは 骨と強固に結合(オッセオインテグレーション) することで固定されます。しかし、顎が成長途中の場合、周囲の歯が動いているのに対し、インプラントはそのままの位置に固定されたままになるため、以下のような問題が起こる可能性があります。

インプラントの位置がずれる

→ 顎が成長すると周囲の歯の並びが変化しますが、インプラントはそのままの位置に残るため、見た目に不自然な状態になったり、噛み合わせがズレたりすることがあります。

高さが合わなくなる

→ 顎の成長とともに 天然歯は適切な位置に移動しながら成長 しますが、インプラントは動かないため、高さが不揃いになり、見た目や噛み合わせに影響を及ぼす可能性があります。

咀嚼機能の問題が生じる

→ 噛み合わせが崩れると、食べ物がうまく噛めない、発音に支障が出るなどの問題が起こることがあります。

顎の成長が終わるまで待つべき理由

成長途中でインプラントを入れてしまうと、大人になったときに「やり直し」が必要になるケースがほとんどです。

  • 成長後に歯並びが変わり、見た目や噛み合わせに問題が出る
  • 顎の形が変わることで、インプラントの埋め込み角度や位置が適切でなくなる
  • 最悪の場合、埋め込んだインプラントを抜去し、新たに埋め直す必要がある

このような 余計な再治療のリスクを減らすためにも、顎の成長が完了するまではインプラントを避けるのが一般的 です。

例外的にインプラントが検討されるケース

ただし、どうしても インプラントを検討する必要がある特別なケース も存在します。例えば、

  • 顎の成長がほぼ完了している年齢(16~18歳以上)
  • 事故や病気で永久歯を失い、他の方法では対応が難しい場合
  • 成長がほぼ止まっていることが医師によって確認された場合

このような場合には、慎重な診断と成長の進行状況の確認を行った上で、部分的にインプラントが検討されることもあります。
しかし、ほとんどのケースでは 成長が完全に終わる20歳ごろまで待つのが一般的な方針 です。

このように、子供の顎は成長を続けるため、インプラント治療には適していません。顎の成長が終わるまでは、一時的な代替治療を検討するのが安全な選択肢 となります。

子供の成長が終わり、インプラントができるタイミングの見極め方

学生

子供のインプラント治療は、顎の成長が終わるまで待つことが一般的ですが、実際に「成長が完了した」と判断するのは簡単ではありません。では、どのようにしてインプラントが可能なタイミングを判断するのでしょうか?

1.顎の成長が完了する一般的な年齢

まず、一般的に 顎の成長が完了するのは以下の年齢とされています。

  • 男性:18〜20歳前後
  • 女性:16〜18歳前後

しかし、成長のスピードには個人差があるため、年齢だけで判断することはできません。
そのため、成長が完全に止まったことを確認するための検査を行う必要があります。

2. 成長の完了を確認するための検査方法

子供の成長が完了し、インプラントが可能かどうかを判断するには、いくつかの検査を組み合わせて慎重に判断します。

① 頭部X線規格写真(セファログラム)による骨成長の確認

  • 「セファログラム」と呼ばれるX線検査 を行い、過去のデータと比較することで、顎の成長が進んでいるかどうかを確認します。
  • 具体的には、1〜2年の間に顎の骨の変化がほとんどない場合、成長がほぼ完了していると判断できます。

② 手の骨(手根骨)のX線撮影

  • 成長の指標として、手首の骨(手根骨)をX線で撮影し、骨の成熟度を確認する方法があります。
  • 手の骨の成長が完了すると、顎の成長もほぼ終了していると判断できるため、インプラントが可能かどうかの目安になります。

③ 歯列矯正の治療経過を参考にする

  • 矯正治療を受けている場合、矯正医が成長の進行状況を把握していることが多いです。
  • 例えば、矯正装置を外した後も歯並びや噛み合わせに変化がない場合、成長が落ち着いたと考えられます。

④ 定期的な顎の成長チェック

  • 1年ごとに歯科医院で定期検診を受け、過去のデータと比較しながら成長が止まっているかどうかを判断します。
  • 顎の大きさや歯並び、噛み合わせの変化がないかをチェックし、成長の終了を確認します。

3. 成長が終わるまでの期間はどう過ごすべき?

「まだ成長が終わっていないけれど、インプラントを検討したい」という場合、成長が完了するまでの期間をどう過ごすべきかも重要です。

① 一時的な補綴治療を活用する

  • 部分入れ歯や接着性ブリッジなどを活用し、見た目や咀嚼機能を維持しながら、成長が完了するのを待ちます。

② 噛み合わせや歯並びを整えておく

  • 将来的にインプラントをスムーズに行うために、矯正治療などで歯列を整えておくことが推奨されます。
  • 特に 歯が失われたことで歯並びが乱れるのを防ぐ処置が重要になります。

③ 歯科医と定期的に相談する

  • 「まだ成長が続いているのか?」「インプラントの準備はどのタイミングが良いのか?」など、専門的な判断が必要なため、歯科医と相談しながら進めるのが理想的です。

子供にとっての治療のタイミングを見極めるためには、以下の点をチェックすることが重要です。

  • 一般的に、男性は18〜20歳、女性は16〜18歳ごろに顎の成長が完了する
  • X線検査(セファログラム)で顎の成長が止まっているかを確認
  • 手根骨のX線撮影で骨の成熟度をチェック
  • 歯列矯正の治療経過や噛み合わせの変化を確認
  • 定期的な検診で歯科医と相談しながら最適なタイミングを判断

成長が完全に終わったことをしっかり確認してからインプラント治療を行うことで、長期的に安定した結果が得られます。「可能なタイミングかどうか」は、自己判断せず、歯科医院でしっかり診断を受けましょう。

子供がインプラントを希望するケースと対応策

「子供が事故や病気で歯を失ってしまった…」
こういった場合、見た目や食事の面で困ることが多く、インプラントを検討する保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、前述のように顎の成長が終わるまではインプラント治療が難しいため、まずは他の方法で対応する必要があります。

例えば、以下のようなケースでは、一時的な代替治療を検討することが重要です。

  • 事故や外傷で前歯を失った
  • 先天的に歯が欠損している(先天性欠如)
  • 虫歯や歯周病で永久歯を失ってしまった

このようなケースでは、成長が終わるまでの間、ブリッジや入れ歯などの方法で対処し、大人になってからインプラントを検討するのが一般的です。

代替治療方法

インプラントが難しい場合、どのような方法で歯を補えばよいのでしょうか?子供の歯を補う治療法として、以下の方法が選択肢となります。

1. 小児用の部分入れ歯

  • 成長に合わせて調整が可能。
  • 取り外しができるため、歯磨きがしやすい。
  • 見た目の改善ができるが、慣れるまで違和感がある場合も。

2. 接着性ブリッジ

  • 隣の歯を削らずに装着できる。
  • 一時的な対応として適している。
  • 成長が進んだ際に改めて治療方針を見直す必要がある。

3. 矯正治療による隙間の調整

  • 歯並びを整えることで、将来的なインプラント治療の成功率を高める。
  • 歯列矯正と併用して治療計画を立てることが可能。

これらの方法を活用することで、子供のうちは歯の機能や見た目を維持しながら、成長後に最適な治療を選択することができます。

まとめ

子供のインプラント治療は基本的に難しく、成長が完了するまで待つのが一般的です。その間、部分入れ歯やブリッジなどの方法を活用して、歯の機能を補いましょう。

重要なポイント

  1. 子供の顎は成長途中のため、インプラントは適さない
  2. 無理に埋め込むと、将来的にずれたり、噛み合わせが悪くなるリスクがある
  3. 代替治療として、部分入れ歯・接着性ブリッジ・矯正治療がある
  4. 成長が終わったタイミングで、インプラントを検討するのが理想的

「子供の歯を失ってしまったけれど、どうすればいい?」とお悩みの方も、焦らず、適切な治療法を選択することが大切です。歯科医とよく相談し、成長に合わせた最適な方法を選びましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

▶プロフィールを見る

梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック