インプラントとブリッジの違いとは?どちらを選ぶべき?
欠損歯の治療には「口の状態」「年齢」「希望の条件」に合わせた選択が大切です
歯を失ったとき、代表的な治療法には「インプラント」と「ブリッジ」があります。どちらも噛む力を取り戻す方法ですが、治療の仕組み・寿命・費用・見た目・身体への負担などに大きな違いがあります。
最適な選択をするためには、それぞれの特徴を正しく理解することが重要です。
この記事はこんな方に向いています
- 歯を失って治療法を検討している方
- インプラントとブリッジの違いを知りたい方
- 自分に合った方法を選びたい方
この記事を読むとわかること
- インプラントとブリッジの基本的な仕組みの違い
- それぞれのメリット・デメリット
- 選び方のポイントと注意点
目次
インプラントとブリッジとは?基本的な違い
インプラントは顎の骨に人工の歯根を埋め込んで人工歯を固定する治療法です。一方、ブリッジは失った歯の両隣の歯を削り、橋のように連結した被せ物で補う方法です。
どちらも見た目や噛む機能を回復できますが、構造が根本的に異なります。
インプラントは人工の歯根を骨に埋め込む治療、ブリッジは隣の歯を削って橋をかける治療です。
インプラントとは?
- 人工歯根を顎の骨に埋め込み、被せ物を装着する治療法
- 周囲の歯に負担をかけずに単独で機能する
- 天然歯に近い見た目と噛み心地を再現可能
ブリッジとは?
失った歯の両隣を削り、そこを支えにして人工歯を橋のように装着する治療法
- 両隣の健康な歯を削って支えにする
- 支えとなる歯に負担がかかる
- 治療期間が短く、保険適用の範囲で行える
インプラントは「失った歯だけ」を補う独立型の治療です。ブリッジは周囲の歯を利用するため、短期間で仕上がりますが、将来的に支えの歯の寿命を縮める可能性があります。
見た目や噛む力の違いは?
インプラントは天然歯のような自然な見た目と噛む力を再現できるのが特徴です。ブリッジも審美的には優れていますが、支えの歯の状態に左右されやすい面があります。
見た目・噛む力ともにインプラントのほうが自然です。
比較ポイント
| 比較項目 | インプラント | ブリッジ |
|---|---|---|
| 見た目の自然さ | 天然歯に非常に近い | 支えの歯と色調が合えば自然 |
| 噛む力 | 天然歯にほぼ近い | 約60~70%程度に低下 |
| 発音・違和感 | 少ない | 若干違和感が出ることがある |
| 安定感 | 骨と一体化して高い安定性 | 支えの歯の状態に依存する |
インプラントは骨と一体化するため、しっかりと噛む感覚を取り戻せます。
ブリッジは隣の歯の支えが必要なため、歯の位置や傾きによっては見た目や噛み心地に差が出ます。
周囲の歯への影響はどのくらい違う?
インプラントは周囲の歯を削らず、負担をかけないのが大きな利点です。ブリッジは隣の健康な歯を削り、支えにする必要があるため、将来的なトラブルにつながることもあります。
インプラントは他の歯を守り、ブリッジは隣の歯に負担をかけます。
ブリッジで起こりやすい影響
- 支えの歯の神経を取る必要がある場合がある
- 支えの歯が虫歯や歯周病になりやすくなる
- 支えの歯が弱るとブリッジ全体の再治療が必要になる
インプラントの特徴
- 独立して固定されるため、他の歯を守る
- 噛む力が均等に分散され、全体のバランスが良い
ブリッジは一見シンプルに見えますが、支えの歯が弱ると全体が崩壊するリスクがあります。インプラントは「1本完結型」なので、他の歯を長持ちさせたい方に向いています。
治療期間や費用の違いは?
インプラントは手術を伴うため期間が長く、費用も高めです。ブリッジは保険適用もあり、短期間で治療できるのがメリットです。
インプラントは時間と費用がかかり、ブリッジは早く安価に治療できます。
治療期間と費用の比較
| 項目 | インプラント | ブリッジ |
|---|---|---|
| 治療期間 | 3〜6か月(骨の状態により前後) | 2〜4週間程度 |
| 費用目安 | 約30〜50万円(自費) | 数千円〜十数万円(保険適用あり) |
| 手術の有無 | あり(骨に埋め込む) | なし |
| 保険適用 | 原則なし(例外あり) | 一部保険適用 |
インプラントは費用や時間がかかる分、長期的な安定性に優れています。ブリッジは早く治療を終えたい場合に有効ですが、再治療のリスクを考慮する必要があります。
長持ちさせるためのメンテナンスの違いは?
インプラントもブリッジも、定期的な歯科健診と日々のケアが不可欠です。ただし、インプラントはインプラント周囲炎などの特有のトラブルに注意が必要です。
どちらもケアが必要ですが、インプラントは専用のメンテナンスが重要です。
インプラントのケア
- 歯垢が溜まるとインプラント周囲炎を起こす
- 専用ブラシやデンタルフロスで丁寧に歯磨きする
- 3〜6か月ごとの定期健診で状態を確認する
ブリッジのケア
- ブリッジ下の清掃が難しい
- 歯間ブラシやフロススレッダーを使う
- 支えの歯の根元を清潔に保つことが重要
どちらも毎日のケアを怠るとトラブルの原因になります。特にブリッジの下部やインプラント周囲は歯垢が溜まりやすいため、歯科衛生士によるプロのクリーニングを継続することが大切です。
治療方法の違い
2つの治療方法はどのように違うのでしょうか?それぞれの治療の流れを解説します。
インプラントの治療の流れ
- 診査・診断 → 骨の状態をCTで確認し、適応可能かを判断
- 埋入手術 → 顎の骨に人工歯根を埋め込む
- 治癒期間(約3〜6ヶ月) → インプラントと骨が結合するのを待つ
- 人工歯(被せ物)の装着 → セラミックなどの人工歯を取り付ける
- 定期的なメンテナンス → 長期的に良い状態を維持するための健診が必要
ブリッジの治療の流れ
- 支えとなる歯の削合 → 両隣の健康な歯を削る
- 型取り・仮歯の装着 → 型取りをして、患者さんに合うブリッジを作製
- ブリッジの装着 → セメントなどで固定
- 定期的なメンテナンス → 支えとなる歯の負担が大きいため、慎重なケアが必要
治療期間としては、インプラントは数ヶ月かかるのに対し、ブリッジは1〜2ヶ月程度で完了することが多いのが特徴です。
メリット・デメリットを比較
それぞれの治療法には良い点と注意すべき点があります。
インプラントのメリット
- 周囲の歯に影響を与えない
- 噛む力が強く、自然な見た目
- 長期間使用できる
- 顎の骨の吸収を防げる
インプラントのデメリット
- 手術が必要
- 治療期間が長い
- 費用が高い
- 全身疾患があると適応できない場合がある
ブリッジのメリット
- 手術不要で短期間で治療完了
- 費用が比較的安い
- 保険適用が可能(素材による)
ブリッジのデメリット
- 両隣の健康な歯を削る必要がある
- 支えとなる歯に負担がかかる
- 清掃が難しく、むし歯や歯周病のリスクが高まる
- 耐久性がやや短い
それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、患者さんの状況に合った治療法を選ぶことが大切です。
どちらの治療が向いているのか?選び方のポイント
「どちらが良いか」は一概に言えません。口の状態・年齢・予算・健康状態などによって最適な方法は異なります。以下のように、自分の状況を整理して考えると判断しやすくなります。
口の状態や希望条件で選び方が変わります。
インプラントが向いている人
- 健康な歯を削りたくない
- 長期間しっかり噛みたい
- 外科手術に抵抗がない
- 顎の骨が十分にある
1. 周囲の歯を削りたくない方
インプラントは、失った歯の部分に人工歯根を埋め込むため、周囲の健康な歯を削る必要がありません。ブリッジは両隣の歯を支えにするため、健康な歯を大きく削る必要がありますが、インプラントなら他の歯に負担をかけずに治療が可能です。
特に、周囲の歯が健全で、むし歯のない状態を維持したい方にとっては理想的な選択肢といえます。歯を削ると、その歯の寿命が短くなる可能性があるため、健康な歯をできるだけ守りたい方にはインプラントがおすすめです。
2. 長期間しっかり噛める状態を維持したい方
インプラントは、天然歯に近い強度を持ち、しっかりと噛める状態を長期間維持できます。
ブリッジの場合、支えとなる歯が弱くなると耐久性が低下するため、数年ごとに作り直しが必要になることがあります。しかし、インプラントは適切なメンテナンスを行えば10年以上、場合によっては一生涯使うことも可能です。
「これから先、しっかり噛んで食事を楽しみたい」「入れ歯のような違和感を避けたい」と考えている方には、インプラントの方が適しています。
3. 外科手術に抵抗がない方
顎の骨に人工歯根を埋め込むため、外科手術が必要になります。局所麻酔で行うため痛みは最小限に抑えられますが、「手術が怖い」「体への負担が気になる」という方には向いていないかもしれません。
また、手術後には数ヶ月間の治癒期間が必要であり、その間は定期的に歯科医院でチェックを受ける必要があります。外科手術に対して抵抗がなく、治療期間をしっかり確保できる方にはインプラントが適しています。
4. 十分な顎の骨がある方
インプラントは顎の骨に直接埋め込むため、骨の量が十分にあることが条件となります。顎の骨が不足している場合は、骨移植や骨再生治療を行ってから埋入手術をする必要があり、治療期間が長くなることもあります。
特に歯を失ってから長期間放置していると、顎の骨が吸収されて薄くなるため、インプラントを希望する場合は早めの受診が大切です。
ブリッジが向いている人
- 短期間で治療を終えたい
- 費用を抑えたい
- 外科手術が難しい
- 隣の歯に被せ物がある
1. 短期間で治療を終えたい方
インプラントは治療期間が数ヶ月〜1年程度かかることもありますが、ブリッジは通常1〜2ヶ月で治療が完了します。
「できるだけ早く歯を入れたい」「仕事の都合で長期間の通院が難しい」という方には、ブリッジが適しているでしょう。
2. 費用を抑えたい方
インプラントは自費診療となり、1本あたり30〜50万円程度の費用がかかります。
一方で、ブリッジは保険適用可能な場合があり、比較的安価に治療を受けられます。
費用を抑えたい方や、複数の歯を失っており高額な治療が難しい方には、ブリッジの方が経済的負担が少ないでしょう。
3. 外科手術が難しい方
糖尿病や心臓病などの全身疾患をお持ちの方は、手術が難しい場合があります。
また、骨が極端に少ない場合や、強い骨粗しょう症の方は手術のリスクが高まるため、ブリッジが選択されることが多くなります。
「手術は避けたい」「全身の健康状態を考慮したい」という方は、ブリッジを検討すると良いでしょう。
4. すでに隣の歯に被せ物がある方
ブリッジは両隣の歯を支えにする治療法ですが、すでに隣の歯に被せ物(被せ物や詰め物)が入っている場合、削ることで見た目や機能に大きな影響が出ないことがあります。
例えば、もともと被せ物が入っている歯なら、追加で削ることに抵抗が少なくなるため、ブリッジの適応になりやすいのです。
どちらの治療が最適かは、歯科医師と相談しながら慎重に決めることが大切です。ご自身の口腔状態をよく理解し、納得のいく治療方法を選びましょう。
どちらを選ぶ人が多い?

一般的には、ブリッジを選ぶ人の方が多い傾向にあります。その理由として、以下のような要因があげられます。
ブリッジが選ばれやすい理由
治療期間が短い
インプラントは治療に数ヶ月〜1年程度かかるのに対し、ブリッジは1〜2ヶ月で完了することが多いため、「すぐに歯を入れたい」という方に選ばれやすいです。
保険適用が可能
保険適用のブリッジなら、費用が数千円〜数万円程度に抑えられるため、経済的な負担が少ないのが魅力です。
インプラントは基本的に自費診療で、1本あたり30〜50万円かかるため、費用面で断念するケースも少なくありません。
外科手術が不要
インプラントは手術が必要ですが、ブリッジなら手術をしなくても済むため、「手術は避けたい」「身体への負担が気になる」という方に選ばれやすいです。
インプラントを選ぶ人も増加傾向
一方で、近年はインプラントを選ぶ人も増えてきています。その背景には、以下のような理由があります。
「自分の歯を削りたくない」人が増えている
ブリッジは両隣の歯を大きく削る必要があるため、健康な歯を守るという観点からインプラントを選ぶ人が増えています。
技術が進化し、安全性が向上
以前は「手術が怖い」と感じる方が多かったのですが、現在は技術の進歩により、痛みやリスクが大幅に軽減されています。「しっかり噛める」「見た目が自然」というメリットもあり、選択肢として人気が高まっています。
長期的に見てコストパフォーマンスが良い
ブリッジは10年程度で作り直すことが多いのに対し、インプラントは適切なメンテナンスをすれば一生使える可能性もあるため、長期的な視点で選ばれることが増えています。
実際の選択割合は?
日本では、ブリッジを選ぶ人の方が多いですが、インプラントの選択率も年々増加しています。特に40代〜60代の方の間では、「健康な歯を守るためにインプラントを選びたい」という意識が高まっているようです。
どちらを選ぶべき?
- 短期間で、できるだけ費用を抑えて治療したい場合はブリッジ
- 周囲の歯を削らず、長期的にしっかり噛める状態を維持したい場合はインプラント
選択肢はそれぞれのライフスタイルや価値観によって変わりますので、ご自身に合った治療法を歯科医師と相談しながら決めることが大切です。
まとめ
インプラントとブリッジには、それぞれ明確な違いがあります。短期的にはブリッジが便利ですが、長期的な口腔の健康を考えるならインプラントが優位です。
一方で、全ての人がインプラントに適しているわけではないため、歯科医師とよく相談し、自分の希望と身体の状態を総合的に判断しましょう。
どちらにもメリットがあり、将来を考えて選ぶことが重要です。
- インプラントは周囲の歯に負担をかけず、長期的な耐久性があるが、手術が必要で費用が高い
- ブリッジは短期間で治療でき、費用も抑えられるが、健康な歯を削る必要があり耐久性はやや短い
- どちらを選ぶかは、患者さんの口腔状態やライフスタイルに合わせて決めるのが大切
どちらの治療がご自身に合っているのか、歯科医院で相談してみてくださいね。



