
インプラントは、適切なケアとメンテナンスを行えば長持ちしますが、残念ながら何らかの理由でダメになってしまうこともあります。では、インプラントがグラグラになったり、噛めなくなった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?その原因や対応方法についてご説明します。
「せっかく入れたインプラントがダメになったらどうしよう?」そんな不安をお持ちの患者さんはどうぞ参考になさってくださいね。
インプラントがダメになる主な原因

インプラントがダメになる原因はさまざまですが、主に以下のようなものが考えられます。
インプラント周囲炎(感染症)
歯周病と似た状態で、インプラントの周りに細菌が繁殖し、炎症が起こる。
初期段階では歯茎の腫れや軽い出血が見られますが、進行すると痛みやインプラントのぐらつきが発生することもあります。
適切な歯磨きや定期的な健診を怠ると、歯垢が蓄積し、細菌が繁殖しやすくなります。
進行するとインプラントが支えを失い、最終的には抜け落ちてしまう可能性があります。
骨との結合不良(オッセオインテグレーションの失敗)
インプラントは顎の骨と結合することで安定しますが、まれにこの結合がうまくいかないことがあります。
骨の密度が低い方や、喫煙・糖尿病などの全身的要因を持つ方は特に結合不良が起こりやすいとされています。
結合が不十分な場合、インプラントがグラついたり、しっかり噛めなかったりすることがあります。
骨を増やす治療(骨造成)を事前に行うことで、結合不良のリスクを軽減できます。
噛み合わせの問題や過度な力がかかる
噛み合わせが適切でないと、特定のインプラントに過剰な力がかかり、緩みや破損の原因になります。
特に食いしばりや歯ぎしりの癖がある方は、インプラントに負担がかかりやすく、長持ちしにくくなります。
ナイトガード(マウスピース)の使用や、定期的な噛み合わせの調整が予防策となります。
インプラントは天然歯よりも力の分散が難しいため、力のかかり方に注意が必要です。
インプラント体や被せ物の破損
インプラント自体が物理的な衝撃を受けて折れる、または被せ物が割れることもあります。
硬いものを噛む習慣(氷やナッツなど)や、事故・転倒による衝撃が破損の原因になります。
被せ物が割れた場合は新しいものに交換することで対処できますが、インプラント体が破損した場合は再手術が必要になることがあります。
材質の選択によって耐久性を向上させることができるため、歯科医と相談して適切な素材を選ぶことが大切です。
メンテナンス不足
インプラントは天然の歯とは異なり、歯垢が付きやすく、定期的な健診とクリーニングが欠かせません。
自宅での歯磨きだけでなく、歯科医院での専門的なクリーニングが必要になります。
定期健診を怠ると、小さなトラブルが見逃され、結果としてインプラントの寿命を縮めることになります。
患者さん自身のケアと歯科医院でのサポートの両方が、インプラントの長期的な安定性を左右します。
このような原因によってインプラントが機能しなくなることがありますが、適切な対応を行えば再治療や他の方法で改善することが可能です。
インプラントがグラグラしてきた時の対策

「インプラントがなんとなく動く感じがする」「違和感がある」といった症状がある場合、早めに対処することが大切です。
1. すぐに歯科医院を受診する
インプラントがグラつく場合、何らかのトラブルが発生している可能性があります。
自己判断せず、歯科医院でレントゲンやCT検査を受けて原因を特定しましょう。
早期発見が、インプラントの寿命を延ばす鍵となります。
2. インプラント周囲炎が原因の場合の対処
軽度の炎症なら、クリーニングや抗生物質の処方で改善できることもあります。
重度の場合は、感染部分を取り除く手術が必要になることも。
炎症を放置すると、インプラントが抜け落ちるリスクが高まるため、早めの治療が重要です。
3. インプラントのネジの緩みが原因の場合の対処
被せ物を固定するネジが緩んでいる場合、歯科医院で締め直すことで改善できることがあります。
早めに対応すれば、インプラント本体を温存できる可能性が高まります。
違和感がある場合は放置せず、すぐに歯科医院へ相談しましょう。
4. 骨との結合が不十分な場合の対処
インプラントが顎の骨としっかり結合していないと、グラつきが生じることがあります。
その場合、一度インプラントを取り除き、骨を再生させる治療を行ってから再埋入することが検討されます。
骨の状態によって治療方針が変わるため、専門医の診察を受けることが大切です。
インプラントがダメになったときの対処法
もしインプラントがダメになってしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
1. まずは歯科医院を受診
インプラントに違和感があったり、ぐらつきを感じたりした場合は、すぐに歯科医院で診察を受けましょう。
- 専門的な検査(レントゲン・CT)を受け、状態を正確に把握する。
- 進行度に応じた治療方針を決定。
早めの診察が、インプラントの再利用や回復の可能性を高めます。
2. インプラント周囲炎の治療
もし感染症が原因でインプラントがダメになっている場合、まずは炎症を抑える治療が必要です。
- 軽度の場合 → 専門的なクリーニングと抗生物質の使用。
- 重度の場合 → インプラントを一時的に除去し、感染部位の治療後に再埋入を検討。
インプラント周囲炎を放置すると、他の健康な歯や骨にも影響を及ぼすため、早めの対応が肝心です。
3. 骨の状態に応じた再治療
インプラントが外れてしまった場合でも、再治療が可能なことが多いです。
骨が十分に残っている場合 → 新しいインプラントを埋入できる。
骨が足りない場合 → 骨造成(骨移植や骨再生療法)を行い、一定期間回復を待つ。
4. 他の選択肢を検討
「もうインプラントは無理かも…」と思われるかもしれませんが、他の治療法もあります。
ブリッジ
- 両隣の歯を支えにして、失った歯を補う方法。
- 健康な歯を削る必要があるが、手術不要。
入れ歯(義歯)
- 取り外し可能で、インプラントが難しい場合の選択肢。
- 近年は精度の高い入れ歯も多く、違和感が少ないものも。
どの治療を選択するかは、患者さんの口腔内の状態や希望に応じて決まります。歯科医としっかり相談しましょう。
インプラントを長持ちさせるための予防策
インプラントを長く使い続けるためには、日々のケアと定期的なチェックが欠かせません。
毎日の歯磨きの徹底 → インプラント周囲に歯垢が溜まるのを防ぐ。
定期的な健診を受ける → 3〜6ヶ月ごとにプロのクリーニングを受ける。
噛み合わせのチェック → 食いしばりや歯ぎしりがある場合は、ナイトガードの使用を検討。
生活習慣の改善 → 喫煙や過度な飲酒は、インプラントの寿命を縮める要因に。
このような対策をしっかり行うことで、インプラントのトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
インプラントがダメになった場合、原因を特定し、適切な対処を行うことが重要です。
対処法 → 早めの受診、感染症の治療、再治療の検討、他の選択肢(ブリッジ・入れ歯)。
予防策 → 毎日の歯磨き、定期健診、噛み合わせの調整、生活習慣の改善。
「インプラントがダメになったらどうしよう…」と不安な患者さんも、まずは歯科医に相談してみてください。適切な対応を取ることで、再び快適な生活を取り戻すことができますよ!