矯正歯科

歯並びが悪いと虫歯や歯周病になりやすい?

歯並びが悪いと虫歯や歯周病になりやすい?

歯並びの乱れは、見た目だけでなく、お口の中の健康にも大きな影響を及ぼし、虫歯や歯周病のリスクが高まることが知られています。歯並びの悪さがこれらの疾患にどのように関与するのか、そのメカニズムや予防策についてご説明します。

歯並びの悪さが口腔内に与える影響

不正咬合は以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 歯磨きがしにくい・・歯が重なり合っていると歯ブラシが届きにくいため、歯垢が残りやすくなります。
  • 咀嚼効率の低下・・噛み合わせが悪いと食べ物を十分に噛み砕けないので、消化器官への負担が増します。
  • 発音への影響・・特定の音が発音しづらくなることがあります。
  • 顎関節への負担・・不正咬合は顎関節に不均等な力をかけ、痛みや違和感を引き起こすことがあります。

歯並びが悪いと虫歯になりやすい理由

歯並びが乱れていると、虫歯のリスクが高まります。その主な理由は以下の通りです。

歯垢の蓄積

歯が重なり合っている部分や歯と歯の間は歯ブラシが届きにくいので、歯垢が溜まりやすくなります。

唾液の流れの阻害

正常な歯並びでは、唾液がお口の中を均等に流れて歯の自浄作用を助けます。しかし、歯並びが悪いと唾液の流れが阻害されて歯垢の除去が不十分になり、お口の中に汚れが残ったままになります。

食べ物の詰まり

歯と歯の間に隙間があると食べ物が詰まりやすくなり、細菌が繁殖しやすくなります。

歯並びが悪いと歯周病になりやすい理由

歯周病は歯を支える組織に炎症が起こる疾患で、歯並びの悪いと歯周病のリスクが高まります。

  • 歯垢の除去が難しい・・歯が重なっている部分は歯磨きが難しく、歯垢が残りやすいため、歯周病菌が増殖しやすくなります。
  • 咬合力がアンバランスになる・・噛み合わせが悪いと、一部の歯や歯茎に過度な力がかかり、歯周組織に負担をかけ、炎症を引き起こすことがあります。
  • 歯肉に炎症が起こる・・歯垢が溜まることで歯肉が炎症を起こし、歯周病の初期症状である歯肉炎を引き起こします。

特に注意が必要な歯並びのタイプ

以下のような歯並びは、特に虫歯や歯周病のリスクが高まるとされています。

  • 叢生(ガタガタ、八重歯)・・歯が重なり合って生えている状態で、歯磨きが難しく、歯垢が溜まりやすいです。
  • 上顎前突(出っ歯)・・上の前歯が前方に突出している状態で、前歯が乾燥しやすく、歯垢が溜まりやすくなります。
  • 下顎前突(受け口)・・下の前歯が上の前歯より前に出ている状態で、奥歯に負担がかかりやすく、歯垢が溜まりやすいです。
  • 開咬・・前歯が噛み合わず、口が閉じにくい状態で、口呼吸になりやすく、口腔内が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなります。

歯並びの改善がもたらすメリット

歯並びを整えることには、以下のような多くのメリットがあります。

虫歯・歯周病の予防

歯磨きがしやすくなると、歯垢がきれいに除去出来るようになるため、これらの疾患のリスクが低減します。

咀嚼効率の向上

歯並びが整うことで噛み合わせが良くなり、食べ物を効率的に噛み砕けるようになります。これにより、消化吸収がスムーズになり、全身の健康にも良い影響を与えます。

審美性の向上

整った歯並びは口元の美しさを引き立て、自信を持って笑顔を見せられるようになります。

発音の改善

歯並びが改善されると、特定の音を発音しやすくなり、話しやすくなります。

顎関節への負担軽減

正しい噛み合わせによって顎関節への過剰な負担が減り、痛みや違和感が減ります。

日常生活でできる予防策

歯並びが悪い場合でも、毎日のデンタルケアを徹底することで虫歯や歯周病のリスクを軽減できます。以下のポイントに注意しましょう。

正しい歯磨き習慣

  • 歯磨きは最低でも1日2回行い、特に就寝前の歯磨きを念入りに行いましょう。
  • 歯間ブラシやデンタルフロスを使用して、歯と歯の間に溜まった歯垢を除去します。

 

  • フッ素を含む歯磨き粉の使用・・フッ素は歯を強化し、虫歯の予防に役立ちます。
  • バランスの良い食事・・糖分の摂取を控え、繊維質の多い野菜や果物を摂取することで、自然な歯の自浄作用を促します。
  • 口腔内の乾燥を防ぐ・・水分補給を心がけ、ガムを噛むなどして唾液の分泌を促進しましょう。

歯科医院での定期健診の重要性

歯並びが悪い方ほど、歯科医院での定期健診の受診が重要になります。健診を受けることで、以下のようなメリットがあります。

早期発見・早期治療

虫歯や歯周病は、初期段階では痛みや症状が出ないことが多いです。定期的な健診を受けることで、これらの疾患を早期に発見し、治療することが可能です。

専門的なクリーニング

歯科医院では、歯磨きだけでは取り除けない歯石や歯垢を専門の器械で除去します。お口の中から細菌を減らすことで歯周病の進行を防ぐことができます。

歯並びの状態の確認

不正咬合がどの程度お口の中に影響を与えているかを確認し、必要に応じて矯正治療の提案を受けることができます。

矯正治療の選択肢について

矯正治療には、さまざまな方法があります。それぞれ特徴やメリット、注意点が異なりますので、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。

ワイヤー矯正

マルチブラケット

特徴

ワイヤー矯正は、ブラケットと呼ばれる小さな器具を歯に装着し、そこに金属のワイヤーを通して歯を動かす伝統的な矯正方法です。

メリット

  • 幅広い不正咬合(歯並びの乱れ)に対応可能。
  • 複雑なケースや大幅な歯の移動にも対応できる。
  • 耐久性が高く、効果が確実。

注意点

  • 金属のブラケットは目立ちやすい(最近では目立ちにくい透明や白いブラケットもあります)。
  • 食べ物が装置に詰まりやすいため、丁寧な歯磨きが必要。
  • 装置による口内の違和感や口内炎のリスクがある。

マウスピース矯正(インビザライン)

インビザライン

特徴

透明なプラスチック製のマウスピースを装着して歯を移動させる矯正方法です。取り外しが可能なため、従来のワイヤー矯正よりも柔軟性があります。

メリット

  • 透明で目立ちにくいデザイン。
  • 食事や歯磨きの際に取り外せるため、衛生管理がしやすい。
  • 痛みや口内炎が少ない(ワイヤーやブラケットがないため)。
  • 計画的な治療が可能で、治療開始時にゴールが見えやすい。

注意点

  • 適切な効果を得るためには1日22時間以上の装着が必要。
  • 複雑な不正咬合には不向きな場合がある。
  • マウスピースの紛失や破損のリスクがある。
  • ワイヤー矯正よりも治療期間が長くなる傾向がある

部分矯正

特徴

気になる歯並びの部分だけを矯正する方法です。特に前歯の目立つ部分の矯正に利用されることが多いです。

メリット

  • 矯正期間が短い(数か月から1年程度)。
  • 費用が抑えられる。
  • 審美性に重点を置いた治療が可能。

注意点

  • 全体の噛み合わせに問題がある場合は適さない。
  • 部分矯正後に他の歯並びが悪化するリスクもあるため、慎重な診断が必要。

舌側矯正(リンガル矯正)

裏側矯正

特徴

歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着する矯正方法です。

メリット

  • 装置が外から見えないため、審美性が高い。
  • ワイヤー矯正と同じ効果を得られる。

注意点

  • 装置が舌に当たりやすいため、違和感が強い。
  • 通常のワイヤー矯正に比べて費用が高い。
  • 装置が見えないので、歯磨きが難しい。

その他の選択肢

  • 拡大床矯正・・特に子どもの矯正で使用される方法で、顎を広げることで歯並びを整える。
  • 早期治療(予防矯正)・・成長期の子どもを対象に、顎の成長を誘導して歯並びを整える治療。

矯正治療を選ぶ際のポイント

矯正治療を選択する際には、以下の点を考慮することが重要です。

  1. 歯並びの状態・・症状の程度によって適した治療法が異なります。
  2. ライフスタイル・・目立ちにくい方法を希望される場合は、マウスピース矯正や舌側矯正がおすすめです。
  3. 費用・・矯正治療には高額な費用がかかる場合が多いので、事前に見積もりを確認することが大切です。
  4. 歯科医師との相談・・矯正治療は長期にわたるため、担当医と治療方針を十分に話し合うことが必要です。

矯正治療は、見た目だけでなく健康面にも多くのメリットをもたらします。自身の歯並びに合った方法を選び、治療を開始することで、長期的に健康な口腔環境を維持できるようになります。

まとめ

歯並びが悪いと、虫歯や歯周病になりやすいというリスクがあります。しかし、毎日の歯磨きを丁寧に行い、歯科医院で定期健診を受けてクリーニングしてもらうことで、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。

歯並びが気になる場合や、虫歯や歯周病に悩まされている患者さんは、一度歯科医院に相談し、ご自身に適した予防策や治療法を見つけましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック