矯正歯科

インプラントの歯がある場合の矯正治療

インプラントの歯がある場合の矯正治療

矯正治療は、歯並びや噛み合わせを改善するために歯を適切な位置に移動させる治療法です。インプラント治療は、失われた歯を補うために人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法で、一度埋入すると位置を移動させることが出来ません。インプラントの歯がある場合に矯正治療は出来るのか、ご説明します。

インプラント歯を有する場合の矯正治療の課題

インプラントは顎の骨に固定されており、天然の歯のように移動させることができません。そのため、矯正治療を行う際にはインプラント以外の歯を動かして歯列を整える必要があります。

  • 固定源として利用する・・インプラントを固定源として他の歯を引っ張って移動させることが可能ですが、力の加減や方向に注意が必要です。
  • 噛み合わせの調整・・インプラントと天然歯の噛み合わせを適切に調整する必要があります。
  • 治療計画の複雑化・・インプラントの位置や数により、矯正治療の計画が複雑になることがあります。

矯正治療前の精密検査と治療計画の立案

矯正治療を開始する前に、精密検査と計画計画の立案が重要です。

  1. 口腔内検査・・歯や歯茎の状態を確認します。
  2. レントゲン撮影・・顎の骨や歯根の状態、インプラントの位置を把握します。
  3. 歯型採取・・歯型を取り、治療計画のシミュレーションを行います。
  4. 治療計画の立案・・患者さんのご希望や口腔内の状態を考慮し、最適な治療計画を策定します。

矯正治療中のインプラントの管理方法

矯正治療中は、インプラントの管理が重要です。

  • 適切な力のコントロール・・インプラントに過度な力が加わらないように注意します。
  • 口腔衛生の徹底・・歯垢がたまってインプラント周囲炎を起こすのを防ぐため、丁寧な歯磨きを心がけます。
  • 定期的な健診・・定期的なチェックとクリーニングを受け、問題の早期発見・対応を行います。

矯正治療後のメンテナンスとフォローアップ

矯正治療が終了した後も、インプラント歯の健康を維持するためのメンテナンスが必要です。

  • リテーナーの使用・・歯の後戻りを防ぐため、リテーナーを使用します。
  • 定期的なクリーニング・・歯科医院で定期的なクリーニングを受け、お口を清潔に保ちます。
  • 生活習慣の見直し・・食生活や喫煙習慣を見直し、口腔内の健康を維持します。

担当医との連携と患者さんの役割

インプラントの歯がある場合の矯正治療は、担当医との密な連携が不可欠です。

  • 情報共有・・インプラント治療を担当した歯科医師と矯正専門医が情報を共有し、最適な治療計画を立てます。
  • 患者さんの協力・・患者さん自身も治療内容を理解し、指示に従ってケアを行うことが重要です。

インプラントの歯がある患者さんの場合の矯正治療は、適切な計画と管理をすればきれいな歯並びへと導くことができます。以下に、患者さんご自身が治療を成功させるために実践できるポイントをあげます。

治療スケジュールの厳守

通院や矯正装置の装着など、歯科医師から指示されたスケジュールを守ることが大切です。特に矯正治療中や治療後のリテーナーの使用は、治療後の成功に直結します。

自己管理の徹底

毎日の歯磨きはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスを使用して、歯垢が溜まらないようにします。また、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、インプラントや天然歯の健康を保つことができます。

治療に関する疑問の解消

治療中に不安や疑問がある場合は、遠慮せずに担当医に相談することが重要です。適切なアドバイスを受けることで、安心して治療に取り組むことができます。

インプラントの歯がある場合の矯正治療で気を付けるべきこと

インプラントの歯がある患者さんが矯正治療を受ける場合、治療を成功させるためにはいくつか注意すべきポイントがあります。インプラントと矯正治療にはそれぞれ特有の特性があるため、治療計画や管理方法に慎重さが求められます。

1. インプラントの歯は動かない

インプラントは顎の骨と結合して固定されているため、天然歯のように矯正装置をつけて動かすことができません。そのため、矯正治療では以下のような調整が必要です。

インプラントを固定源として活用する

インプラント歯は動かないという特性を利用して、他の歯を移動させる際の「支え」として使うことができます。ただし、過度な力がかからないように注意が必要です。

噛み合わせを調整する

インプラント歯と他の歯の噛み合わせを治療計画の中で細かく調整する必要があります。

2. 矯正装置の選択と配置

矯正治療では、装置の選択と配置が重要です。インプラントの歯を持つ患者さんには、以下の点を考慮します。

適切な装置の選択

矯正装置がインプラント歯やその周辺に負担をかけないように設計する必要があります。

  • インビザラインなどのマウスピース矯正は、インプラント周囲への影響を最小限に抑えることが可能です。
  • ワイヤー矯正の場合は、インプラント部位を避けて装置を配置します。

装置の力のコントロール

矯正力がインプラントに直接伝わらないように注意します。力の方向や大きさの管理が非常に重要です。インプラントの歯に過大な力をかけることでインプラントを傷めることのないように注意する必要があります。

3. 矯正治療中のインプラント周囲のケア

矯正治療中は、インプラント周囲の健康を維持することが不可欠です。特に以下のケアに注意します。

歯磨きの徹底

インプラント周囲に歯垢が蓄積すると、歯周病のリスクが高まります。適切な歯磨きや歯間ブラシの使用が必要です。

定期的にクリーニングを受ける

矯正治療中は、定期的にクリーニングを受け、装置を付けた歯やインプラントの周囲を清潔に保つようにします。

歯茎の状態のモニタリング

インプラント周囲の歯茎が健康であることを確認します。腫れや炎症が見られる場合は、早急に対応します。

4. 治療計画の柔軟性

インプラントの位置や状態に応じて、矯正治療の計画を柔軟に調整する必要があります。治療中に新たな問題が発生することもあるため、以下の点に注意します。

事前の精密診断

矯正治療前にインプラントや顎骨の状態をレントゲンや3Dスキャンで詳細に確認し、問題点を洗い出します。

治療中の計画の再調整

歯列や噛み合わせの変化に応じて、計画を随時見直すことが重要です。

5. 矯正後のメンテナンス

矯正治療が終了した後も、インプラントの歯の健康を維持するためのメンテナンスが求められます。

リテーナーの調整

矯正治療後、歯の位置を安定させるために使用するリテーナーがインプラントに影響を与えないように設計する必要があります。

インプラント周囲の定期的なチェック

矯正治療後もインプラントの状態を定期的に確認し、噛み合わせや歯周組織の健康を維持します。

生活習慣の見直し

矯正治療後は、食事や口腔ケアの習慣を見直し、インプラントや天然歯を長持ちさせる努力をしましょう。

まとめ

インプラント歯がある場合の矯正治療は、一般的な矯正治療に比べて複雑な要素が含まれますが、適切な計画と管理を行えば成功する可能性は十分にあります。以下のポイントを意識することが重要です。

  • インプラントの歯の特性を理解し、治療計画に反映させる。
  • 矯正装置の選択と配置に注意する。
  • 矯正中もインプラントの周囲のケアを徹底する。
  • 担当医との連携を図り、継続的なメンテナンスを受ける。

インプラント歯を有する患者さんが矯正治療を成功させるためには、歯科医師との密なコミュニケーションと積極的なケアが鍵となります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック