歯周病

歯周ポケットは深くなっても治りますか?

歯周ポケットは深くなっても治りますか?

歯周病の進行度の目安に「歯周ポケット」の深さがあります。歯周ポケットが深くなると、歯垢がたまりやすくなり、炎症が進行しやすくなります。歯周ポケットが深くなる原因や治療方法、予防策についてご説明します。

歯周ポケットとは何か?

歯周ポケットとは

歯周ポケットとは、歯と歯茎の間にできる隙間のことで、通常はごく浅いものです。しかし歯周病が進行すると、この隙間が深くなり、歯周ポケットが形成されます。歯周ポケットは、歯垢や食べかすがたまりやすく、炎症を引き起こす原因となります。健全な歯茎では、歯周ポケットの深さは1?2mm程度ですが、炎症が進むと3mm以上に深くなります。

歯周ポケットが深くなる原因

歯周ポケットが深くなる主な原因は、歯垢や歯石によって歯茎が炎症を起こし、歯に接している部分の歯茎が破壊され、歯茎との間に隙間が出来ることです。他にも様々な原因がありますので、ご説明します。

1. 歯磨きがうまく出来ていない

毎日の歯磨きがうまく出来ていなくて磨き残しが多いと、歯と歯茎の境目に歯垢がたまり、歯茎が炎症を起こします。特に、歯の裏側や歯と歯の間などは磨き残しが多くなりやすい傾向があり、歯垢がたまりやすく、歯周ポケットが深くなる原因となります。

2. 歯石の形成

歯垢が長期間歯に着いたまま放置されると、唾液中のミネラル成分と結合して硬くなり、歯石になります。歯石は歯ブラシでは除去できませんので、歯科医院で専門的なクリーニングを受ける必要があります。歯石の表面はデコボコしており、そこにも細菌が多くついています。そのため歯石がついたままになっていると炎症をさらに悪化させ、歯周ポケットが深くなる原因となります。

3. 喫煙

喫煙は、歯周病を悪化させる大きな要因の一つです。タバコに含まれるニコチンやタールなどの有害物質は、歯茎の血流を悪化させ、免疫力を低下させます。その結果、歯茎の細胞が健康を保てず、炎症が進行しやすくなり、歯周ポケットが深くなります。また、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の進行が早い傾向があります。

4. 噛み合わせが悪い(不正咬合)

噛み合わせが悪いと、特定の歯や歯茎に強い力がかかり、炎症が引き起こされます。この力が長期間にわたって続くと、歯周ポケットが深くなりやすくなります。また、噛み合わせの問題がある場合、歯が部分的に重なっていたりして歯磨きがうまくできず、歯垢がたまりやすくなることも原因の一つです。

5. 全身的な健康状態の影響

糖尿病などの慢性的な全身疾患は、体の免疫力を低下させるだけでなく、歯周組織にも影響を及ぼします。糖尿病患者さんは、通常の人よりも歯周病が悪化しやすく、歯周ポケットも深くなりやすいことがわかっています。また、ホルモンの変動が大きい妊娠中の女性も、歯茎が敏感になりやすく、歯周病のリスクが高まります。

6. 遺伝的要因

遺伝的に歯周病にかかりやすい体質の人もいます。家族に歯周病の方がおられる場合、その傾向が遺伝することがあります。この場合、毎日の歯磨きをより徹底する必要があります。

これらの要因によって歯周ポケットが深くなり、歯周病が進行していきます。進行を食い止めるには、適切な予防と早期発見が大切です。

歯周ポケットが深くなった場合のリスクと症状

歯周ポケットが深くなると、以下のようなリスクと症状が発生します。

  • 歯のぐらつき・・歯周ポケットが深くなると、歯を支える骨が減少し、歯がぐらつきやすくなります。
  • 口臭の悪化・・歯周ポケット内にたまった歯垢が悪臭の原因になり、口臭が強くなることがあります。
  • 歯茎の出血や腫れ・・炎症が進行すると歯茎が赤く腫れ、歯磨き時に出血することがあります。
  • 歯が抜けるリスク・・重度の歯周病が進行すると、最終的には歯を失う可能性があります。

歯周ポケットは深くなっても治るの?

歯周ポケットが深くなった場合でも、適切な治療を行うことで改善が可能です。ただし、歯周ポケットの深さや状態に応じて、治療の難易度や期間が異なります。あまり深くならない初期のうちに発見して治療を始めるほど、改善の見込みは高まります。

特に、軽度の歯周ポケット(3~4mm程度)は、歯科医院でのクリーニングと毎日の正しい方法での歯磨きで改善が期待できます。しかし、重度の歯周ポケット(5mm以上)は、専門的な治療が必要です。

歯周ポケットの治療法

歯周ポケットが深くなった場合、治療法にはいくつかの選択肢があります。患者さんの症状に応じて、以下の方法が取られます。

1. スケーリングとルートプレーニング

歯石や歯垢を除去し、歯周ポケットの深さを減らすために行われる治療法です。

スケーリングは、歯と歯茎の間にたまった歯垢や歯石を機械的に除去する処置です。特に歯磨きでは取りきれない歯石をプロフェッショナルな器具で取り除くことが目的です。これにより、歯周ポケット内の炎症を抑えることが期待されます。

ルートプレーニングは、歯の根の表面を滑らかにすることで、歯垢が付着しにくくする処置です。深い歯周ポケットがある場合、歯の根元の表面に汚れが付着しやすいため、この施術により再発防止が図られます。スケーリングとルートプレーニングは、比較的軽度から中等度の歯周ポケット(3〜5mm程度)に対して有効です。

2. フラップ手術

歯周ポケットが深すぎる場合、歯茎を切開して歯の根元を直接清掃する手術が行われます。

歯周ポケットが5mm以上と深い場合、通常のクリーニングでは改善が難しいことがあります。その場合、フラップ手術(歯周外科手術)が推奨されることがあります。この手術では、歯茎を切開して歯根を露出させ、直接歯垢や歯石を取り除きます。歯茎を剥がすことで視界が確保され、歯周ポケットの深さを根本的に改善することが可能です。

フラップ手術後、歯茎を元の位置に戻し縫合するため、ポケットが浅くなり、再度深くなるリスクを減少させます。この手術は、中〜重度の歯周病に対して特に効果的です。

3. 歯周組織再生療法

歯周ポケットを改善するために、骨や歯茎を再生させる治療法が行われることがあります。

重度の歯周病では、歯を支える骨や組織が破壊されていることがよくあります。歯周組織再生療法では、骨や歯周組織を再生させるための特殊な材料や薬剤を使用して治療を行います。この治療法は、歯周ポケットが深い場合でも、組織の回復を促進し、歯を長期的に保存することが期待されます。

再生療法では、コラーゲン膜や骨補填材などを使用して、自然治癒力を高めます。再生療法の成功には、患者さん自身の日常的なケアと歯科医師による適切な管理が重要です。

4. レーザー治療

レーザーを使って歯周ポケットの炎症を抑え、深さを改善する治療法も普及しています。

近年、レーザー治療が歯周ポケット治療に導入され、特に炎症を抑え、歯周ポケットを浅くする効果が期待されています。レーザーは歯茎の炎症を抑えるだけでなく、殺菌効果も持っており、歯周ポケット内の細菌を効果的に除去できます。

レーザー治療は痛みが少なく、治療後の回復も早いとされています。中等度の歯周ポケットに対しては、非常に効果的な治療法として注目されています。

歯周ポケットの予防と日常ケア

歯周ポケットを予防するためには、日常の口腔ケアが非常に重要です。以下のポイントを意識して、歯周病の進行を防ぎましょう。

毎日の適切な歯磨き

歯垢をしっかりと除去するため、正しい歯磨き方法を習慣づけることが大切です。

歯間ブラシやフロスの使用

歯磨きだけでは取りきれない歯垢を、歯間ブラシやデンタルフロスで除去しましょう。

薬効成分の入った歯磨き粉の使用

歯周病の改善ための様々な薬効成分の入った歯磨き粉が市販されていますので、それらを使うと効果が高まります。歯磨き粉に含まれる成分をしっかりと歯茎に効かせるため、製品の注意書きを守ってお使いください。

定期的に健診を受ける

歯科医院での定期的な健診により、歯周ポケットの深さや歯茎の健康状態をチェックし、早期の対策が可能になります。

健診の重要性と早期発見のメリット

健診は、歯周ポケットの早期発見に非常に重要です。歯周病は初期段階では症状が出にくく、気づかないうちに進行することが多いです。定期的な健診を受けることで、歯周ポケットの深さや歯茎の腫れなどの歯周病の兆候を見逃さずに対処できるため、将来的に重症化するのを防ぎ、症状を改善させることが可能です。

早期発見で治療期間の短縮

早期に歯周ポケットを発見すれば、治療も比較的簡単で、期間も短縮されます。

費用の負担の軽減

重度の歯周病になる前に治療を行えば、費用面での負担も軽減されます。

歯周ポケットが深くなっても、適切な治療と予防を行うことで、改善が期待できる場合があります。まずは定期的な健診を受け、日常のケアを徹底することが、歯周病から歯を守る最善の方法です。

まとめ

歯周ポケットが深くなった場合でも、早期に治療を受けることで改善の見込みは十分にあります。しかし、重度になる前に予防することが最も大切ですので、毎日の歯磨きや定期的な健診を通じて、歯周病の進行を防ぎましょう。

また、適切なセルフケアと専門的な治療を併用することで、歯と歯茎の健康を長く保つことができます。歯周ポケットの管理は、歯周病の進行度を知るうえでの重要なシグナルとなります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック