国民病ともいえる歯周病を予防するためにはどうしたら良いのでしょうか?効果的な方法はあるのでしょうか? 歯周病予防の方法についてご説明します。
目次
歯周病予防=プラークを徹底的に除去すること
日本歯周病学会によると、「歯周病の一番の予防法はプラークの除去そのもの」です。そのため、歯垢(プラーク)をしっかりと歯ブラシなどを使って
除去するしかありません。
「原因である悪玉菌が潜む歯垢(プラーク)を徹底的に取り除く」ことは、それ自体はとてもシンプルに聞こえます。
それには以下の2つが重要です。
- 毎日歯ブラシでの歯磨きに加えて、デンタルフロス、歯間ブラシなどの補助器具を遣ってプラークコントロールを的確に
行うこと - 定期的に歯科医院でクリーニングを受けること
歯周病の予防と治療において最も重要なのは、この2つに尽きます。
強力なバイオフィルムは抗菌うがいで取り除ける?
バイオフィルムはキッチンや洗面所のヌメリのようなネバネバした物質で、その中には細菌がたくさんいます。
歯垢(プラーク)が口の中で溜まっていくと、そこにもバイオフィルムが形成され、歯周病菌などの細菌が棲みついていています。
歯周病菌を殺菌するためのうがい薬が売られていますが、うがい薬の殺菌成分はバイオフィルムの中までは届きませんので、十分な効果があるとはいえません。
歯周病治療に使われているジスロマックという抗菌薬がありますが、バイオフィルムの中に潜んでいる細菌は、バラバラに浮遊している菌と比べて500倍もの抵抗性をもっています。人体に悪影響を与えることのない量の抗菌薬を服用しただけでは、歯周病菌を殺菌することは出来ません。
一番効果的なのは、物理的にバイオフィルムを除去することです。つまり、歯科医院で歯科衛生士が行っている歯のクリーニングを受けることです。3ヶ月に一度程度の通院で済みますし、歯がツルツルになってとても気持ちが良い上に、歯周病の治療や予防になりますので、ぜひ一度定期健診(歯のクリーニング)を受けていただくことをおすすめします。
歯周病の特徴~こんな症状はありませんか?~
こんな症状はありませんか? あったら、もしかしたら歯周病かもしれません
- 朝起きたとき、口の中がネバネバする
- 口臭が気になる
- 歯ぐきが赤く腫れている(健康な歯ぐきはピンク色で引き締っている)
- 歯磨きすると歯茎から出血する
- 歯ぐきがむずがゆい、痛みがある
- 歯と歯の間に隙間ができた
- 歯が長くなったような気がする
- 硬いものが噛みにくい。歯がグラグラする
- 前歯が出っ歯になってきた
歯周病予防では口の中の細菌の全体数を減らすことが大切
歯周病菌は、虫歯の原因菌などいくつもの細菌がたくさん増えることでネバネバした物質を作り出し、それが固まってバイオフィルムになります。一般的に歯垢とも呼ばれていますが、バイオフィルムは歯垢よりも更にネバネバしており、歯のほかに舌の表面やのどの奥などに張り付きます。
お口の中の細菌の数は、お口の中をきれいにしているかどうかで決まります。普段からきちんと歯磨きが出来ている健康な方のお口の中には、100億個以下の細菌がいるといわれてますが、歯磨きが十分に出来ていない場合は、細菌の数は1兆個程度になるといわれます。
これらの細菌の全てが虫歯や歯周病を引き起こす悪玉菌ではありませんが、特定の細菌だけを除去する事は出来ませんので、お口の中にいる細菌の全体数を減らすことが歯周病予防への近道です。
歯周ポケットの深さで知る歯周病の進行
歯周病菌によって歯肉炎が起こると、歯茎が赤く腫れたり出血したりという症状が出てきます。歯肉炎によって歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる隙間が出来、歯周ポケットの中には歯ブラシが届きませんので、歯周病菌が更に繁殖していきます。
歯医者の定期健診を受けていただくと歯周ポケット内部の歯垢、バイオフィルムや歯石を除去し、細菌を減らすことが出来ますが、ご家庭のケアだけではこれらを取り去ることが出来ません。
この時点で歯周病治療を受けないと、歯肉炎は更に悪化します。実態調査では、歯周病が進んで4ミリ以上のポケットがある人の割合は30代では25%、40代前半で30%、40代後半では40%以上となっています。
歯周ポケットの深さと歯周病の目安(厚生労働省の健康情報サイトe-ヘルスネットより)
- 3mm以内・・健康な歯肉の状態
- 4~5mm・・初期の歯周病、
- 6mm以上・・重度の進行した歯周病
歯周病を予防する方法に関するQ&A
歯周病の予防方法は、口の中の細菌の全体数を減らすことが重要です。日常的な歯磨きやデンタルフロス、歯間ブラシを使ってプラーク(歯垢)を徹底的に除去し、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けることが大切です。
歯周病菌のバイオフィルムを除去するには、毎日の歯磨きと歯間のプラークコントロールが必要です。デンタルフロスや歯間ブラシを使ってプラークを取り除くことが大切です。また、定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受けることも効果的です。
抗菌うがい薬はバイオフィルムの中までは届かないため、バイオフィルムの除去には十分な効果がありません。物理的な手段でバイオフィルムを除去することが効果的であり、歯科医院での歯のクリーニングが一番効果的です。
まとめ
「歯周病の一番の予防法はプラークの除去そのもの」ですので、口腔内をとにかく清潔にすることが大切です。毎日のセルフケアで落としきれない汚れを3ヶ月に1回程度の歯科医院でのクリーニングできれいにすることで、歯周病のリスクがかなり下がります。
まずは一度定期健診を受けて、歯周病にかかっていないかを調べてもらいましょう。もし歯茎に炎症がある場合は、セルフケアでの効果的な歯垢の落とし方について歯科衛生士からアドバイスを受けると、最初は磨けていなかった部分も徐々に磨けるようになってきます。それが歯周病予防のために大きな一歩となります。