矯正歯科

矯正後に後戻りが起こる理由とは?

矯正後に後戻りが起こる理由とは?

矯正治療後に歯並びが美しく整っても、その後、歯が元の位置に戻ってしまう「後戻り」が起こるリスクがあります。矯正後に後戻りが起こる理由、後戻りを防ぐための方法や対応策についてご説明します。

矯正治療後の後戻りとは?

矯正治療を受けた患者さんが、治療後に「後戻り」を経験することがあります。後戻りとは、矯正器具を外した後に歯が少しずつ元の位置に戻ってしまう現象を指します。

この現象は、矯正治療が完了した後でも、歯や歯茎、顎の骨が完全に安定するまで時間がかかるために起こります。

後戻りが起こる原因

1. 歯の周囲の組織の影響

矯正後に後戻りが起こる大きな理由の一つに、歯を支えている周囲の組織が関係しています。矯正治療中は、装置を付けて歯に力を書けることで歯列が少しずつ動きます。その際に歯を支える歯茎や顎の骨、靭帯などが変化に追いつくためには時間がかかります。

特に、矯正治療終了直後は、これらの組織がまだ完全に安定していないため、歯が再び元の位置に戻ろうとする力が働きます。

  • 歯茎や靭帯が再形成される時間が必要
  • 顎の骨の再生や安定にも数ヶ月から数年かかることがある

2. 矯正器具を外した後の保定装置が重要

矯正器具を外した後、保定装置(リテーナー)を適切に使用しないと、後戻りが起こる可能性が高くなります。リテーナーは、矯正後に歯を新しい位置に固定するために必要なもので、これを付け忘れる時間が長くなると、歯が再び動いてしまうことがあります。保定装置は、矯正治療が終了した直後に特に重要であり、患者さんの生活習慣や使用頻度が後戻りに大きく影響します。

  • 後戻りを防ぐにはリテーナーの適切な装着が必要
  • 装着期間を守らない場合、数ヶ月で後戻りが進行することがある

3. 日常生活の習慣と影響

患者さんの生活習慣も、後戻りに影響を与える要因の一つです。特に歯磨きや歯垢の管理が不十分であると、歯茎の健康が損なわれ、歯の安定性が低下します。また、歯ぎしりや食いしばりの習慣がある場合、矯正後の歯に過度な力がかかり、これも後戻りの原因となることがあります。

  • 歯磨きや歯垢除去が不十分な場合、歯茎の炎症や歯周病のリスクが増大する
  • 歯ぎしりが原因で歯の位置が動く場合がある

後戻りを防ぐための対策と予防法

後戻りを防ぐためには、矯正治療が終了した後の適切なケアと継続的な対策が重要です。

1. 保定装置の使用を徹底する

矯正治療後に最も重要な役割を果たすのが保定装置(リテーナー)です。矯正器具で動かした歯は、すぐに元の位置に戻ろうとする性質があります。リテーナーは、歯が新しい位置に定着するまでサポートするために必要不可欠な装置です。

リテーナーの種類

リテーナーには大きく分けて、取り外し可能なタイプ(マウスピース型)と固定式(ワイヤー型)があります。どちらも使用方法や使用期間が重要で、医師の指示に従って適切に使用することが求められます。

マウスピース型

装着が簡単で、食事や歯磨きの際に取り外すことができるため便利ですが、毎日長時間の使用が必要です。

固定式リテーナー

歯の裏側にワイヤーを接着して歯の位置を固定します。このタイプは患者さんの意識に頼ることなく歯の位置を保持できるメリットがありますが、ワイヤーの周囲に汚れがたまりやすいため、定期的な歯科健診とクリーニングが必要です。

装着期間

保定装置の使用期間は一般的に数ヶ月から数年ですが、患者さんによっては一生涯にわたって夜間装着が推奨されることもあります。特に矯正治療直後は、リテーナーをできる限り長時間装着することが重要です。医師の指示に従い、リテーナーの使用を継続することで、後戻りのリスクを大幅に減少させることができます。

2. 歯科健診を定期的に受ける

矯正治療が終了してからも、定期的な歯科健診を受けることで、早期に後戻りの兆候を察知し、適切な処置を受けることができます。

矯正治療が完了した後も、定期的な歯科健診は欠かせません。歯科医師は、後戻りの兆候を早期に察知し、必要に応じてリテーナーの調整や追加の治療を行うことができます。後戻りのリスクを抑えるためには、少なくとも半年に一度の健診を受けることが理想的です。

歯科医師によるチェックポイント

  • リテーナーの適切な装着状況を確認
  • 歯や歯茎の健康状態の確認
  • 後戻りの兆候がないかの評価

定期的な健診を受けることで、万が一の後戻りが起こり始めた場合でも、早期に適切な対策を講じることができます。

日常生活での習慣を改善

日常生活での習慣も後戻りに大きく影響を与えます。

歯ぎしりや食いしばりの防止

歯ぎしりや食いしばりは、歯に大きな力をかけ、歯の位置を再び動かす原因になります。これを防ぐためには、就寝時に歯そのものの摩耗と歯並びが動くのを防ぐためのマウスピース、または保定装置を装着することが推奨されます。また、ストレスが原因で歯ぎしりが起こる場合、ストレスの軽減策を講じることも重要です。

歯磨きと歯垢の管理

矯正後も、歯磨きを怠らず、歯垢が溜まらないようにすることが必要です。歯垢が溜まると歯茎の炎症を引き起こし、歯周組織が弱くなり、歯が動きやすくなります。特にリテーナーを装着している場合は、装置の周りに歯垢が溜まりやすいので、徹底的な口腔ケアが求められます。

適切な食習慣

硬い食べ物や粘着性のある食べ物は、矯正後の歯に過度な力をかけることがあり、歯の位置が動きやすくなる原因になります。矯正治療後は、食事に注意し、歯に負担をかけないよう心がけることが大切です。

4. 保定装置のメンテナンス

リテーナー自体のメンテナンスも後戻り防止には重要です。リテーナーが汚れたり、破損したりすると、装着が不十分になり、後戻りのリスクが高まります。

リテーナーの清掃

リテーナーは毎日きれいに洗う必要があります。洗うタイミングは食事の後や寝る前が良いでしょう。リテーナー専用の洗浄剤を使用すると汚れを効果的に落とすことが出来ます。

定期的にリテーナーをチェックする

リテーナーが変形していないか、破損がないかを定期的に確認し、異常があればすぐに歯科医院に相談しましょう。

5. 歯並びに変化がないか良く見ておく

後戻りの初期症状を見逃さないためにも、自分の歯並びの変化に注意することが大切です。以下のようなサインが見られた場合、すぐに歯科医師に相談しましょう。

  • 前歯の隙間が広がってきた。
  • かみ合わせが以前と異なると感じる。
  • 歯並びが少しずつ不揃いになってきた。

これらのサインが見られた場合、早めに対応することで後戻りを最小限に抑えることができます。

後戻りを防ぐためには、保定装置の使用や定期健診などの基本的なケアに加え、日常生活での注意も欠かせません。患者さんご自身が意識的にこれらの対策を継続することで、矯正治療の成果を長く保つことができます。

後戻りが起こった場合の対応策

もし後戻りが起こった場合、早期の対応が必要です。軽度の後戻りであれば、再度保定装置を使用することで改善されることがあります。しかし、重度の後戻りが発生した場合は、再び矯正治療を検討する必要があるかもしれません。以下の対応策を考慮してください。

リテーナーの再使用

歯が少しだけ動いた場合、リテーナーの使用を再開することで後戻りを防ぐことが可能です。

部分的な矯正治療

一部の歯が元に戻った場合、部分的な矯正治療が効果的な場合があります。

矯正担当医に相談

後戻りの症状が進行していると感じた場合は、早めに担当医に相談しましょう。

これらの対策や予防法をしっかり守ることで、矯正治療後の美しい歯並びを長く維持することができます。患者さん自身の意識とケアが、矯正治療の成功と後戻りの防止に大きく関わってきます。

まとめ

矯正治療後の後戻りは、どなたにも起こりうる問題ですが、適切な対策を取ることでリスクを大幅に減らすことができます。保定装置の使用や定期的な歯科健診に加え、日常生活での習慣に気を付けていただくことが、後戻りを防ぐために重要なポイントです。

歯並びを美しいまま維持するためには、矯正後のケアが不可欠です。患者さん自身の後戻りに対する取り組みが、矯正治療の長期的な成功を左右します。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック