歯列矯正は健康保険が適用されますか?
歯列矯正は、一般的には健康保険が適用されない自由診療です。ただし、厚生労働大臣が定める疾患に伴う噛み合わせの異常や、外科手術が必要な顎変形症など、一定の条件を満たす場合は保険診療の対象になります。
「噛みにくいから」「歯並びがかなり悪いから」という理由だけで、保険が使えるわけではありません。診断名や不正咬合の原因、必要となる治療方法、治療を受ける医療機関など、複数の条件を満たす必要があります。
簡潔にいうと、一般的な出っ歯・受け口・八重歯・歯のガタガタを整える矯正治療は、原則として保険適用外です。
この記事を読むとわかること
- 歯列矯正が原則として保険適用外になる理由
- 矯正治療に健康保険が適用される条件
- 出っ歯・受け口・子どもの矯正に保険が使えるか
- マウスピース矯正の保険適用について
- 保険診療を受けられる歯科医院の探し方
- 保険適用になった場合の費用の考え方
- 自費診療の負担を抑える方法
保険が適用されるかどうかは、単に歯並びの見た目だけで決まりません。この記事では、患者さんがご自身の状況を整理しやすいように、条件や判断のポイントを順番に解説します。
目次
- 1 なぜ一般的な歯列矯正には健康保険がきかないのですか?
- 2 歯列矯正が保険適用になるのはどのような場合ですか?
- 3 厚生労働大臣が定める疾患とは何ですか?
- 4 永久歯が生えてこない場合は保険適用になりますか?
- 5 顎変形症の矯正治療には保険が使えますか?
- 6 出っ歯や受け口、八重歯は保険適用になりますか?
- 7 子どもの歯列矯正には健康保険が使えますか?
- 8 マウスピース矯正は保険適用になりますか?
- 9 保険適用の矯正治療にはどのようなメリット・デメリットがありますか?
- 10 保険適用の矯正治療を受けるときの注意点は何ですか?
- 11 保険適用の矯正歯科はどのように探せばよいですか?
- 12 保険適用になった場合の費用はいくらですか?
- 13 保険適用外の矯正費用を抑える方法はありますか?
- 14 自分が保険適用になるか判断するポイントはありますか?
- 15 まとめ
なぜ一般的な歯列矯正には健康保険がきかないのですか?
歯列矯正に健康保険が適用されない主な理由は、一般的な歯並びの改善が、病気やけがに対する治療ではなく、見た目や噛み合わせをより良くすることを目的とした治療と位置づけられているためです。
健康保険は、病気やけがに対して必要と認められる標準的な医療を支える制度です。矯正治療には、使用する装置や治療方法、仕上がりに対する希望などに多くの選択肢があります。そのため、通常の矯正治療は自由診療として行われ、治療費は患者さんの全額自己負担になります。
歯並びや口元を整えることを主な目的とした矯正治療は、原則として保険適用外です。
例えば、次のような矯正治療は、一般的に自由診療となります。
- 歯のガタガタをきれいに並べる治療
→ 歯が重なって生えている叢生を改善する治療です。歯磨きがしやすくなるなどの健康上の利点もありますが、通常は保険適用外です。 - 出っ歯や受け口を改善する治療
→ 歯の傾きや歯並びを動かして改善できるケースは、基本的に自由診療です。ただし、顎の骨格に大きな問題があり、外科手術が必要な場合は扱いが異なります。 - 八重歯やすきっ歯を整える治療
→ 見た目や歯磨きのしやすさを改善する目的で行う治療も、原則として保険は適用されません。 - 前歯だけを整える部分矯正
→ 治療範囲が限定されていても、保険診療になるわけではありません。部分矯正も通常は自由診療です。 - マウスピース型矯正装置による治療
→ 透明で目立ちにくい装置を使用する一般的なマウスピース矯正は、基本的に自由診療となります。
ここで注意したいのは、「噛みにくい」「発音しにくい」「歯磨きしにくい」といった困りごとがあれば、必ず健康保険が使えるわけではない点です。保険適用になるかどうかは、症状の強さだけではなく、国が定めた診断や治療条件に当てはまるかどうかで判断されます。
一般的な矯正治療と保険適用になる可能性がある治療を、次の表に整理しました。ご自身の歯並びが気になる場合も、見た目だけで判断せず、必要な検査を受けることが大切です。
| 治療の目的・状態 | 保険適用の考え方 |
|---|---|
| 一般的な出っ歯・受け口の改善 | 原則として自由診療 |
| 歯のガタガタや八重歯の改善 | 原則として自由診療 |
| すきっ歯や前歯だけの部分矯正 | 原則として自由診療 |
| 厚生労働大臣が定める疾患に伴う不正咬合 | 条件を満たせば保険適用 |
| 外科手術が必要な顎変形症 | 手術前後の矯正治療が保険適用になる可能性がある |
| 一定条件を満たす永久歯の萌出不全 | 開窓術が必要な場合などは保険適用の可能性がある |
歯並びが同じように見えても、歯の傾きが原因なのか、顎の骨格が原因なのかによって治療方法は変わります。保険適用の判断には、レントゲン撮影や口腔内診査などを含む専門的な診断が必要です。
歯列矯正が保険適用になるのはどのような場合ですか?
歯列矯正が健康保険の対象になるのは、一般的な審美目的の治療ではなく、国が定める疾患や状態に伴って生じた不正咬合を治療する場合です。
日本矯正歯科学会では、保険診療の対象になる矯正治療を、大きく3つに分けて案内しています。対象となる場合でも、地方厚生局へ所定の届出を行った保険医療機関で治療を受ける必要があります。
保険適用になるのは「指定された疾患」「一定条件の永久歯の萌出不全」「外科手術が必要な顎変形症」に関する矯正治療です。
保険適用となる代表的な3つのケースを一覧にしました。いずれも、歯並びが悪いという理由だけでなく、原因や必要な治療方法まで含めて判断されます。
| 保険適用となるケース | 主な条件 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 厚生労働大臣が定める疾患に伴う不正咬合 | 対象疾患があり、その疾患が原因で噛み合わせに異常が生じている | 疾患名だけでなく、不正咬合との関係が確認される |
| 永久歯3歯以上の萌出不全 | 前歯や小臼歯の永久歯のうち3歯以上が生えず、埋伏歯開窓術が必要 | 歯が生えていないだけでなく、手術の必要性などが判断される |
| 顎変形症 | 顎の骨を切る手術などが必要で、手術前後に矯正治療を行う | 矯正治療だけで改善できるケースは通常対象外 |
保険適用の条件は細かく定められており、患者さん自身が一覧を見ただけで判断するのは難しいものです。「自分も当てはまるかもしれない」と感じた場合は、まず歯科医師に相談し、必要に応じて保険診療に対応した医療機関を紹介してもらいましょう。
厚生労働大臣が定める疾患とは何ですか?
厚生労働大臣が定める疾患とは、顎や口腔の発育、歯の本数、顔面の形態などに影響を与え、不正咬合の原因となる先天性疾患などです。
対象となる疾患は診療報酬改定によって追加・見直しが行われることがあります。そのため、「対象疾患は全部で○種類」と固定した数字で説明すると、改定後に情報が古くなる可能性があります。
指定された疾患があるだけではなく、その疾患が原因で噛み合わせに異常が起きていることが保険適用の条件です。
代表的な疾患には、次のようなものがあります。
- 唇顎口蓋裂
→ 唇や顎、口蓋が生まれつき分かれている状態です。歯の生える位置や顎の成長に影響し、不正咬合が生じることがあります。 - ダウン症候群
→ 顎の発育や歯の本数、生える時期などに特徴がみられ、不正咬合に対する矯正治療が必要になる場合があります。 - 鎖骨頭蓋骨異形成
→ 永久歯が正常に生えてこない、乳歯が長く残るなど、お口の中にも特徴的な症状が現れることがあります。 - トリーチャ・コリンズ症候群
→ 顎や顔面の骨の発育に影響する先天性疾患で、噛み合わせの異常が生じることがあります。 - 外胚葉異形成症
→ 歯の本数が少ない、歯の形が通常と異なるなどの特徴が現れ、矯正治療が必要になることがあります。 - 先天性部分無歯症
→ 生まれつき永久歯が複数存在しない状態です。欠如している歯の本数や位置、年齢などによって保険適用の判断が異なります。
2026年度の診療報酬改定では、歯科矯正の保険給付対象となる疾患や先天性欠如歯に関する条件が見直されています。連続する3歯以上の先天性欠損歯を有する患者さんなどが、新たな対象として示されています。
ただし、指定疾患の診断を受けていれば、どのような矯正治療でも自動的に保険が適用されるわけではありません。
保険適用には、主に次の点が確認されます。
- 対象となる疾患の診断があるか
- その疾患が不正咬合の原因になっているか
- 矯正治療が医学的に必要と認められるか
- 保険診療として認められた治療方法で行うか
- 施設基準を満たした医療機関で治療するか
疾患名の確認だけでなく、噛み合わせとの関係や治療の必要性まで含めて判断されます。「指定疾患に該当するか分からない」という場合は、診断を受けた医療機関からの診療情報提供書などを準備して相談すると、確認が進みやすくなります。
永久歯が生えてこない場合は保険適用になりますか?
前歯や小臼歯の永久歯が複数生えてこない場合、一定の条件を満たすと矯正治療が保険適用になる可能性があります。
従来から、前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上に萌出不全があり、歯ぐきを開いて埋まっている歯を引き出す「埋伏歯開窓術」が必要な不正咬合は、保険診療の対象とされています。
永久歯が3本生えてこないだけで保険適用になるのではなく、歯の位置や原因、開窓術の必要性などが判断されます。
永久歯が生えてこない原因には、いくつかの種類があります。
- 永久歯が歯ぐきや顎の骨の中に埋まっている
- 永久歯が生える方向に別の歯や過剰歯がある
- 生まれつき永久歯そのものが存在しない
- 生えるための空間が不足している
- 顎の骨や歯の発育に関わる疾患がある
「歯が生えてこない」という状態だけでは、原因を判断できません。レントゲンやCTなどで、永久歯が存在するか、どこに埋まっているか、自然に生える可能性があるかを確認します。
また、先天的に永久歯が存在しない「先天性欠如」と、永久歯はあるものの生えてこない「萌出不全」は異なる状態です。保険適用の条件も同じではないため、混同しないようにしましょう。
顎変形症の矯正治療には保険が使えますか?
顎変形症と診断され、顎の骨を切る外科手術が必要な場合は、手術前後の矯正治療に健康保険が適用される可能性があります。
顎変形症とは、上顎や下顎の大きさ、形、位置などに骨格的な問題があり、歯を動かす矯正治療だけでは十分な噛み合わせをつくることが難しい状態です。
受け口や出っ歯であっても、矯正治療だけで改善できる場合は原則として自費診療です。外科手術が必要と診断された顎変形症では、保険適用になる可能性があります。
顎変形症にみられることがある症状には、次のようなものがあります。
- 下顎が大きく前に出ている
- 上顎が大きく前に出ている
- 顔や顎が左右にずれている
- 前歯が噛み合わず、食べ物を噛み切りにくい
- 奥歯の一部しか噛み合っていない
- 歯を動かすだけでは噛み合わせの改善が難しい
- 発音や咀嚼に支障が出ている
ただし、見た目から「顎変形症だろう」と自己判断することはできません。骨格的なずれの程度や成長状態、歯の傾きなどを分析し、外科手術が必要かどうかを診断します。
顎変形症の治療は、一般的に次のような流れで行われます。
- 検査・診断
→ 顔や口腔内の写真、レントゲン、歯型などを用いて、顎の骨格や噛み合わせを分析します。 - 手術前の矯正治療
→ 顎の骨を移動した後に正しく噛み合うよう、事前に歯の位置を整えます。 - 顎矯正手術
→ 入院し、口腔外科などで顎の骨を移動する手術を受けます。 - 手術後の矯正治療
→ 手術後の噛み合わせを安定させるため、歯の位置を細かく調整します。 - 保定治療
→ 矯正装置を外した後、歯並びが戻らないように保定装置を使用します。
顎変形症の治療では、矯正歯科と口腔外科が連携して治療を進めます。通院だけで完結する通常の矯正治療とは異なり、入院や手術を伴うため、治療期間や体への負担も十分に理解しておく必要があります。
出っ歯や受け口、八重歯は保険適用になりますか?
一般的な出っ歯、受け口、八重歯、歯のガタガタは、原則として保険適用外です。歯並びが目立つ場合や噛みにくさがある場合でも、それだけで保険診療になるわけではありません。
保険適用になる可能性があるのは、国が定める疾患が原因となっている場合や、顎変形症として外科手術が必要な場合などです。
歯並びの悪さの程度ではなく、原因となる疾患や必要な治療方法によって保険適用が判断されます。
同じ「出っ歯」「受け口」に見えても、歯の傾きが主な原因のケースと、顎の骨格が主な原因のケースがあります。その違いによって、保険適用の可能性も変わります。
| 歯並び・状態 | 一般的な保険適用 | 保険適用になる可能性があるケース |
|---|---|---|
| 出っ歯 | 原則として自由診療 | 顎変形症や指定疾患に伴う不正咬合 |
| 受け口 | 原則として自由診療 | 外科手術が必要な顎変形症 |
| 八重歯・歯のガタガタ | 原則として自由診療 | 指定疾患や一定条件の萌出不全に伴う場合 |
| 開咬 | 原則として自由診療 | 顎変形症などで外科手術が必要な場合 |
| 顔や顎の左右差 | 程度や原因による | 骨格的な顎変形症と診断され、手術が必要な場合 |
歯並びの名称だけで、保険適用になるかどうかを判断することはできません。患者さんが同じような受け口に見えても、一方は歯を動かすだけで改善でき、もう一方は外科手術が必要ということがあります。
子どもの歯列矯正には健康保険が使えますか?
子どもの歯列矯正も、大人と同じく原則として自由診療です。「成長期の治療だから」「学校歯科健診で歯並びを指摘されたから」という理由だけで、保険が適用されるわけではありません。
一方、指定疾患に伴う不正咬合や、一定条件を満たす永久歯の萌出不全などでは、子どもの矯正治療が保険診療の対象になる可能性があります。
子どもの矯正も原則として自費ですが、先天性疾患や永久歯の萌出に関する問題などでは保険適用になる場合があります。
2024年度の診療報酬改定では、学校歯科健診で不正咬合の疑いを指摘された子どもについて、保険適用となる矯正治療の対象かどうかを相談・診断するための「歯科矯正相談料」が新設されました。
ただし、学校歯科健診で歯並びについて指摘されたからといって、矯正治療そのものが保険適用になるわけではありません。
学校歯科健診をきっかけに受診した場合は、次のような点を確認します。
- 不正咬合の種類や程度
- 顎の成長や顔の骨格
- 永久歯の本数や生える位置
- 指定疾患の有無
- 保険診療の対象となる可能性
- 専門的な医療機関への紹介が必要か
学校歯科健診は、問題を早く見つけるためのスクリーニングです。確定診断ではないため、指摘を受けた場合は、結果のお知らせを持参して歯科医院で詳しい診察を受けましょう。
マウスピース矯正は保険適用になりますか?
透明なマウスピース型矯正装置を使う一般的な矯正治療は、基本的に保険適用外です。目立ちにくさや取り外しやすさなど、装置に対する患者さんの希望に応じて選ぶ治療は、通常、自由診療として扱われます。
保険診療では、対象となる病気や治療方法だけでなく、使用できる材料や装置などにも一定の決まりがあります。そのため、保険適用の条件を満たしていたとしても、患者さんが希望するマウスピース型矯正装置を自由に選べるとは限りません。
一般的なマウスピース矯正は自費診療です。保険適用の矯正では、治療方法や装置に制限があります。
マウスピース矯正を検討するときは、保険が使えるかどうかだけでなく、次の点も確認しましょう。
- マウスピース矯正で改善できる歯並びか
- 抜歯が必要か
- 1日何時間装着する必要があるか
- 治療費に追加のマウスピース作製費が含まれるか
- 治療計画からずれた場合の対応
- 保定装置の費用が含まれているか
目立ちにくさだけで治療方法を選ぶと、歯の動かし方や噛み合わせの改善に限界が生じることがあります。装置の種類よりも、まずは正確な診断と治療計画が重要です。
保険適用の矯正治療にはどのようなメリット・デメリットがありますか?
保険適用になる最大のメリットは、患者さんの費用負担を抑えながら、医学的に必要な矯正治療を受けられることです。一方で、対象となる条件や受診できる医療機関、使用する装置などには制限があります。
保険診療は、希望すれば誰でも選択できる安価な矯正プランではありません。医学的な必要性と制度上の条件を満たした場合に利用できる治療です。
費用負担を抑えられる反面、治療方法や医療機関を自由に選べるとは限りません。
保険適用の主なメリット
- 自己負担を抑えられる
→ 保険診療では、年齢や所得などに応じた自己負担割合で治療を受けられます。 - 医学的な機能改善を重視した治療を受けられる
→ 噛む、飲み込む、発音するといった口腔機能の改善を目的として治療が行われます。 - 高額療養費制度の対象になる場合がある
→ 顎変形症の手術や入院などで1か月の自己負担が高額になった場合、所得区分に応じて負担が軽減される可能性があります。 - 医療費控除を申告できる可能性がある
→ 年間の医療費が一定額を超えた場合は、確定申告によって所得控除を受けられることがあります。
保険適用の主なデメリット・制限
- 対象となる症例が限られている
→ 歯並びが悪いという理由だけでは、保険適用になりません。 - 治療できる医療機関が限られている
→ 所定の施設基準を満たし、地方厚生局へ届け出た保険医療機関で治療を受ける必要があります。 - 装置や治療方法に制限がある
→ 見た目や快適性を優先して、好きな装置を自由に選べるとは限りません。 - 顎変形症では手術や入院が必要になる
→ 費用は抑えられても、治療による身体的な負担まで小さくなるわけではありません。 - 通院期間が長くなることがある
→ 矯正歯科と口腔外科など、複数の診療科へ通院する場合があります。
保険適用のメリットだけを見て治療を選ぶのではなく、治療内容、期間、手術の必要性、装置の制限などを含めて検討することが大切です。特に顎変形症では、「保険で安く治療できるから」という理由で外科手術を選ぶものではありません。
保険適用の矯正治療を受けるときの注意点は何ですか?
最も重要な注意点は、保険適用の矯正治療を行える歯科医院が限られていることです。矯正治療を行っている歯科医院であっても、すべての医院が保険診療に対応しているわけではありません。
対象となる矯正治療は、厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生局へ届け出た保険医療機関で行う必要があります。
保険適用の症例であっても、対応していない歯科医院で同じ治療を受けると、保険診療として扱われない場合があります。
受診前には、次の点を確認しましょう。
- 保険適用となる矯正治療に対応しているか
- 顎口腔機能診断施設などの届出を行っているか
- 連携している口腔外科や病院があるか
- 検査・診断の段階から保険診療になるか
- 自費診療と保険診療の違いを説明してもらえるか
- 治療途中で装置や治療方法を変更する可能性があるか
また、保険診療と自由診療を同じ一連の治療の中で自由に組み合わせられるとは限りません。例えば、保険診療の対象であっても、患者さんの希望で保険診療に含まれない装置や材料を選ぶ場合は、治療全体の扱いを事前に確認する必要があります。
保険適用の矯正歯科はどのように探せばよいですか?
保険適用となる矯正治療に対応した医療機関は、各地方厚生局が公開している「施設基準の届出受理医療機関名簿」で確認できます。
名簿の歯科欄から、「矯診」や「顎診」などの届出項目を確認する方法があります。日本矯正歯科学会も、地方厚生局の名簿を用いた確認方法を案内しています。
ホームページに「矯正歯科」と書かれているだけではなく、保険診療に必要な施設基準の届出を確認することが大切です。
届出の種類によって、対応する保険診療の内容が異なります。患者さんがご自身で完全に判断するのは難しいため、受診前に歯科医院へ問い合わせると安心です。
| 確認したい項目 | 主な内容 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 矯診 | 指定疾患や一定条件の永久歯萌出不全などに対する矯正治療 | 地方厚生局の施設基準届出受理医療機関名簿を確認 |
| 顎診 | 外科手術を必要とする顎変形症の手術前後の矯正治療 | 地方厚生局の名簿や医療機関の案内を確認 |
| 連携医療機関 | 顎矯正手術や入院治療を担当する病院・口腔外科 | 初診相談時に歯科医院へ確認 |
| 保険適用の判断 | 診断名や治療方法が制度上の条件を満たすか | 診察・検査後に歯科医師が判断 |
近くに対応可能な歯科医院が見つからない場合は、まずかかりつけの歯科医院や矯正歯科で相談する方法もあります。診察の結果、保険適用の可能性がある場合は、対応可能な大学病院や矯正歯科、口腔外科などを紹介してもらえることがあります。
保険適用になった場合の費用はいくらですか?
保険適用の矯正治療では、診療報酬点数に基づいて治療費が計算され、患者さんは年齢や所得などに応じた自己負担割合を支払います。
「自費診療で100万円かかる治療が、3割負担なら33万円になる」という単純な計算ではありません。自費診療と保険診療では、そもそもの料金の決まり方が異なります。
保険診療の費用は自費料金に自己負担割合を掛けて計算するのではなく、保険で定められた診療報酬点数をもとに計算されます。
費用に影響する主な要素は、次のとおりです。
- 検査や診断の内容
- 使用する矯正装置
- 治療期間
- 通院回数
- 顎矯正手術の有無
- 入院日数
- 患者さんの自己負担割合
- 高額療養費制度の所得区分
矯正治療は一般的に治療期間が長いため、通院のたびに診察料や調整料などの自己負担が発生します。顎変形症の場合は、矯正治療費に加えて、入院費や手術費、検査費なども必要です。
ただし、手術や入院によって1か月の自己負担額が高額になった場合は、高額療養費制度を利用できる可能性があります。加入している健康保険へ事前に限度額の取り扱いを確認しておくと安心です。
保険適用外の矯正費用を抑える方法はありますか?
保険適用外であっても、医療費控除や分割払いなどを活用することで、矯正費用の負担を軽減できる場合があります。
ただし、月々の支払額だけで判断すると、手数料を含めた総支払額が分かりにくくなります。契約前に、治療費の総額と追加費用の条件を確認しましょう。
医療費控除、院内分割、クレジットカード、デンタルローンなどが選択肢になります。
医療費控除を利用する
噛み合わせや咀嚼機能の改善など、治療を目的とした歯列矯正は、医療費控除の対象になる可能性があります。
一方、見た目を整えることだけを目的とした矯正治療は、対象外になる場合があります。判断に迷う場合は、領収書や治療内容が分かる書類を保管し、税務署や税理士へ確認しましょう。
歯科医院の分割払いを確認する
歯科医院によっては、治療費を複数回に分けて支払える院内分割を用意していることがあります。
分割回数、手数料、支払時期、治療途中で中止した場合の精算方法などを確認する必要があります。
デンタルローンを利用する
デンタルローンは、歯科治療費に利用できるローンです。治療費をローン会社が歯科医院へ支払い、患者さんが分割で返済します。
月々の負担を抑えやすい一方で、金利や分割手数料がかかるため、返済総額を確認したうえで利用しましょう。
治療費の範囲を確認する
矯正治療の料金表示は、歯科医院によって異なります。最初に提示された金額だけでなく、次の費用が含まれているか確認することが大切です。
- 精密検査・診断料
- 矯正装置料
- 毎回の調整料
- 追加装置の費用
- 抜歯などの処置費
- 保定装置料
- 治療後の経過観察料
安く見える料金でも、通院ごとの調整料や追加装置料が別に設定されていると、最終的な総額が高くなることがあります。費用を比較するときは、月々の金額ではなく、治療終了までに必要となる総額で考えましょう。
自分が保険適用になるか判断するポイントはありますか?
患者さん自身が保険適用を確定することはできませんが、専門的な相談を検討する目安はあります。歯並びの見た目だけではなく、これまでに受けた診断や、永久歯の本数、外科手術の必要性などが重要な判断材料になります。
先天性疾患、複数の永久歯の欠如・萌出不全、顎の骨格的なずれを指摘されている場合は、保険適用の可能性について相談する価値があります。
次の項目に当てはまる場合は、歯科医師へ伝えましょう。
- 顎や口腔に関係する先天性疾患の診断を受けている
- 永久歯が複数生えてこない
- 生まれつき永久歯が足りないと説明された
- 埋まっている歯を引き出す手術が必要といわれた
- 顎の骨を切る手術が必要と説明された
- 顎や顔の左右差が大きい
- 大学病院や口腔外科への紹介を勧められた
- 学校歯科健診で専門的な相談を勧められた
これらに当てはまっても、必ず保険適用になるとは限りません。一方、当てはまる項目がなくても、検査によって骨格的な問題が見つかる場合があります。
保険適用かどうかだけを目的に受診するのではなく、「どのような問題があり、どの治療方法が適しているか」を確認することが大切です。
まとめ
歯列矯正は、一般的には健康保険が適用されない自由診療です。出っ歯、受け口、八重歯、歯のガタガタなどが目立っていても、歯並びの悪さだけを理由に保険診療になるわけではありません。
保険適用になる可能性があるのは、主に次のケースです。
- 厚生労働大臣が定める疾患に伴う不正咬合
- 一定条件を満たす永久歯3歯以上の萌出不全
- 外科手術を必要とする顎変形症
- 制度上の条件を満たす先天性欠如歯など
さらに、保険診療として治療を受けるためには、所定の施設基準を満たし、地方厚生局へ届け出た医療機関を受診する必要があります。
歯並びが悪いかどうかだけでなく、その原因が歯にあるのか、顎の骨格や疾患にあるのかによって、治療方法や保険適用の可能性は変わります。気になる症状がある場合は、自己判断で諦めたり、保険適用だと思い込んだりせず、まず歯科医院で相談しましょう。
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