矯正歯科

口腔習癖が引き起こす歯並びへの影響

口腔習癖が引き起こす歯並びへの影響

歯並びの原因の一つとして、口腔習癖があります。口腔習癖とは、意識的または無意識的に行われる指しゃぶり、爪を噛む、舌を突き出すなどのお口周りの癖のことです。これらの習癖があると、歯並びや顎の健康に影響を及ぼすことがありますので、ご説明します。。

口腔習癖の種類とその特徴

指しゃぶりや唇を噛む行動は、子供たちに良くある癖ですが、これらの行為は歯並びや顎の発達に影響を及ぼします。

1. 指しゃぶり

指しゃぶり

指しゃぶりは吸指癖(きゅうしへき)ともいい、幼児期の子供に多く見られる癖です。親指を加えて吸引する癖を拇指吸引癖(ぼしきゅういんへき)といい、指しゃぶりの中でもこれが一番多いと言われています。

指しゃぶりが長期間続くと、指で上顎や下顎の前歯を前方に押し出して、出っ歯(上顎前突)や開咬の原因になることがあります。また、上顎の成長を妨げて上顎の歯のアーチが狭くなる歯列狭窄などの噛み合わせの問題を引き起こす可能性があります。

2. 唇を噛む・唇を吸い込む

ストレスや不安から、無意識に唇を噛んだり吸い込んだりする人がいます。唇を噛むと前歯に圧力が加わり、上の前歯は前方に、下の前歯は内側に傾斜して、出っ歯や受け口になったり、過蓋咬合を引き起こすこともあります。長期にわたると、唇の形にも影響を及ぼすことがあります。

3. 舌癖(舌突き習癖)

舌癖は、舌を歯の間や口腔の特定の場所に押し付ける癖を指します。前歯に対して歯列を前に押し出す舌癖を続けていると、上顎前突や開咬、上下の歯の噛み合わせが捻じれた交叉咬合になる場合があります。

舌を前に突き出す癖があると、開咬や空隙歯列(すきっ歯)の原因にもなり、歯並びの問題だけでなく、発音にも影響を与えることがあります。

4. ペン噛みや爪噛み

ペン噛み

ペンや爪を噛む癖は、主にストレスや集中力の維持のために、無意識に行われます。これらの習慣は、歯の損傷や歯列不正を引き起こすリスクを高めます。

特に、硬い物を長期間噛むことは、歯の摩耗や歯のひび割れの原因となることがあります。

5. 口呼吸

私たちは通常は鼻呼吸を行いますが、口から呼吸することを口呼吸と呼び、様々な原因で口呼吸になっている子供がいます。口呼吸をしていると口が開きっぱなしになるため、お口の中が乾燥して、口内に細菌が繁殖して虫歯になりやすくなります。

また、歯並びにも影響が出て、口呼吸によって舌の位置が下がってしまうことで、舌の力が常に下あごに加わり、受け口になりやすくなります。同時に唇の筋肉の発達が抑制されることから、出っ歯にもなりやすくなります。

これらの癖は、子供の歯や顎の発育に影響を及ぼすため、適切な対策を早めに行うことが重要です。

口腔習癖が歯並びに及ぼす影響

口腔習癖は子供の歯並びや顎の健康に影響を及ぼすことがあります。こうした癖が歯に与える影響は、その種類によって異なります。例えば、指しゃぶりは上顎の前へ押し出し、結果として出っ歯の原因となります。また、唇を噛む習慣は下顎の発育を妨げ、不正咬合のリスクを高めることが知られています。

1. 歯列の乱れ

  • 持続的に行われるお口の周りの癖は、歯が正常な位置で成長するのを妨げ、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。
  • 特に指しゃぶりや舌の癖は、前歯を前方に押し出すことで、不正咬合や出っ歯を引き起こす原因となります。

2. 歯の移動や捻じれ

  • 唇を噛む、頬かみ、舌突きなどの癖が無意識で行われると、特定の歯に圧力をかけ続け、歯の移動や捻じれを引き起こすことがあります。
  • これにより、歯並びの乱れや噛み合わせの問題が生じる可能性があります。

3. 歯の摩耗と損傷

  • ペン噛みや爪噛みのように、硬いものを噛む習慣は、歯の表面の摩耗や損傷を引き起こすことがあります。
  • これは、歯のエナメル質が薄くなったり、割れや欠け、ひびの原因となります。

4. 顎関節への影響

  • 一部の口腔習癖は、顎関節に大きなストレスをかけ、顎関節症のリスクを高めることがあります。
  • これにより、顎の痛み、顎の動きに伴うクリック音、または口の開閉がしにくくなるなどの症状が現れることがあります。

5. 歯肉への影響

  • 頬かみの癖は、頬の内側の粘膜の損傷や炎症を引き起こす可能性があります。
  • 同じ場所ばかり繰り返し噛んでいると、その部分に潰瘍ができてしまう可能性もあります。

これらの癖の影響は、子供の口腔健康にとって深刻な問題となるため、早期に適切な予防策や治療法を行いましょう。

口腔習癖の診断と治療

口腔習癖には、爪噛み、唇や頬の内側を噛む、舌の突き出し、歯ぎしり(ブラキシズム)など、無意識に行われる癖が含まれます。これらの習慣は、時にストレスや不安が原因で発生することがありますが、歯や口の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

診断

口腔習癖の診断は、通常、歯科医師や口腔外科医による口腔検査と患者さんの治療歴の評価によって行われます。患者が特定の習慣に気づいていない場合、歯科医は歯や顎の異常な摩耗、口腔内の傷、またはその他の口腔内の問題を指摘することで習慣の存在を確認することがあります。

治療

治療法は、習慣の種類やその原因によって異なります。以下に一般的な治療法をいくつかご紹介します。

1. 指しゃぶり

幼い時期は無理にやめさせないで見守ることも大切です。

ストレスや不安が原因の場合、屋外で遊ばせたり運動でストレスを発散させ、他のものに注意を向けさせるようにしましょう。

2. 舌を突き出す癖

口腔筋機能訓練法(MFT)によってお口の周辺の筋肉のバランスを整えます。MFTは、食べる(咀嚼)、飲み込む(嚥下)、発音、呼吸などの時の舌や口唇の位置の改善を目的とした簡単なトレーニングです。

3. 口呼吸

口輪筋などのお口周りの筋肉の機能訓練をおこないます。

4. 歯ぎしり、食いしばり

歯ぎしりや顎を強く噛む癖がある場合は、ナイトガードやマウスピースの使用が推奨されます。これらは歯ぎしりや食いしばりから歯を保護し、顎の筋肉にかかる圧力を軽減するのに役立ちます。

口腔習癖を短期間でやめることが出来ると、歯や口に起こっていた異常は自然に治ることが多いです。長期間に渡って口腔習癖が続いていた場合は、歯や口に起こっている以上は自然には治らないため、矯正治療などが必要になります。

まとめ

子供の口腔習癖は無意識のうちに歯列不正や噛み合わせの問題を引き起こすことがあり、その結果、顎関節症や歯の摩耗などの問題に繋がるリスクがあります。歯並びや顎に問題を起こさせないためには、口腔習癖の早期の診断と適切な治療、また家庭での注意深い観察とケアが重要です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

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