歯列矯正は歯に弱い力を長時間かけ続けることで歯を動かして行きます。そのため治療期間は2年程度かかる方が多くなります。装置を歯に付ける期間が長いことから、治療を躊躇される方もおられると思います。矯正の治療期間についてご説明します。
治療ステップごとの平均的な期間
矯正治療は複数のステップを踏むことで進行します。各ステップごとの平均的な期間を見ていきましょう。
1. 初診から治療計画の作成まで
最初の健診で患者さんの歯や顎の状態を詳しく確認し、治療方針を立てます。この過程には約1~2か月がかかります。
2. 装置を歯に装着して矯正開始
診断と計画が完了し、治療を始めることに決めた場合には、患者さんと医院の間で契約書や確認書のようなものを交わすのが一般的です。その際には、支払方法も決定しておく必要があります。
書類や支払いの事務が済めば、必要に応じて虫歯や歯周病の治療、親知らずや小臼歯の抜歯を行います。その後、歯に問題がなければ実際に装置をつけて歯を動かす治療が始まります。装着自体は短時間で行えますが、初めて装置をつけた後、慣れるための期間が約1~2週間ほど必要です。
3. 調整期間
治療のメイン部分である調整期間では、月1回程度のペースで通院し、器具の調整を行います。この期間が最も長く、1年半から3年が一般的です。
4. 保定期間
装置が外れた後も、歯並びを安定させるための保定期間が必要です。保定期間は1~2年が目安です。この期間中は、リテーナーと呼ばれる装置を装着することが求められます。
矯正治療の種類と治療期間
矯正治療には全体矯正と部分矯正があります。
- 全体矯正・・歯全体に装置をつけて全部の歯を動かす。
- 部分矯正・・主に2~8本の前歯のみを動かして軽度な不正咬合を治す
全体矯正の治療期間
全体矯正では中~重度の不正咬合の治療を行います。重度の不正咬合とはガタガタや八重歯など、歯の重なりが大きいものや、出っ歯や受け口の突出が大きいものをいいます。そのため装置をつける前に抜歯が必要になることが多く、治療期間の平均的な目安は2~3年程度です。
部分矯正の治療期間
部分矯正は主に前歯を対象としており、軽度のガタガタや出っ歯などを部分的に治療します。治療期間の平均的な目安は数ヶ月から1年程度ですが、全ての不正咬合に適用できるわけではなく、軽度の症状に適しています。
装置の種類別の治療期間
ワイヤー矯正、裏側矯正の治療期間
歯が最も早く動くのはワイヤー矯正で、歯1本1本の表面にブラケットという小さな装置を貼り付け、そこにワイヤーを通して歯に力をかけます。
裏側矯正はブラケットとワイヤーを歯の裏側に取り付けます。裏側矯正は出っ歯の治療に向いていると言われており、出っ歯の患者さんの場合はワイヤー矯正と比べて若干治療期間が短くなる可能性があります。
マウスピース矯正の治療期間
マウスピース矯正は透明なマウスピースを7日~10日程度で新しいものにつけかえて歯を動かして行きます。マウスピース1枚あたり歯を0.25mm動かす設計になっており、ワイヤーとブラケットを使った場合よりも歯をゆっくりと動かすため痛みが少ないのが特徴です。
しかし、歯をゆっくりと動かすため抜歯矯正のように大きく歯を動かす治療では治療期間が大変長くなってしまうため、抜歯を伴う治療の場合ははじめはワイヤー矯正で行い、途中でマウスピース矯正に装置を変更する場合があります。
治療中の通院の頻度
治療中の通院頻度は、装置の種類によって異なります。ワイヤー矯正と裏側矯正は1ヶ月に1回程度、マウスピース型矯正は1ヶ月から3ヶ月に1回の通院が一般的です。
治療初期にはIPR(ディスキング)、アタッチメントの接着、アンカースクリューの設置などで通院回数が不定期になることもあります。
治療期間に影響を与える要因
治療の期間にはさまざまな要因が関係します。
1. 年齢
若年層の場合、骨の成長がまだ残っているため、比較的早く歯が動きやすい傾向があります。逆に、成人の場合は骨が硬くなっているため、治療に時間がかかることがあります。
2. 不正咬合の程度
不正咬合が軽度であれば、治療期間も短くなる傾向にありますが、重度の不正咬合では長期の治療が必要となります。
3. 治療に対する協力度
患者さんが指定された歯磨きやリテーナーの装着をしっかりと行うことも治療期間に影響します。特に保定期間中は、リテーナーの使用を怠ると歯並びが後戻りする可能性があるため、注意が必要です。
歯をもっと早く動かすには?
歯を動きやすくするために、PBMヒーリングと呼ばれる装置があります。PBMヒーリングは近赤外線を歯の周辺に照射することによって歯の動きをスピードアップさせられます。
片顎4分ずつ両顎で計8分使用することで、最大50~66%治療期間を短縮させることができます。
主にマウスピース矯正の患者さん向きに作られており、マウスピースの交換時期を5日程度に縮めることが出来ます。
※歯の動く速さには個人差があります。
▼PBNヒーリングについてはこちらで詳しく解説しています。
保定期間
治療が終了すると装置を外すことができますが、終了直後はまだ歯が動きやすい状態で、装置を外すことで歯並びが後戻りを起こすことがあります。
歯の後戻りを防ぐために、装置を外した後は、保定装置(リテーナー)を歯に付けます。保定装置はマウスピース型のものが主流ですが、前歯の裏側に細いワイヤーをレジンで貼り付けて前歯が動かないように固定する場合もあります。
保定期間は、装置を付けていた期間と同等、またはそれ以上が理想的です。リテーナーは痛みを伴わず、装着時間を徐々に減らしていくことが可能です。
まとめ
矯正治療の期間は、治療の種類や症状の重さによって異なります。全体矯正では2~3年、部分矯正では数ヶ月から1年が一般的です。
装置ごとにそれぞれ特徴があり、治療効率を上げるための技術も導入されています。通院頻度も装置の種類により異なり、治療期間中の管理と治療終了後の保定が重要です。