歯と口のトラブル

親知らずの周りの歯茎がめくれて痛い それは「智歯周囲炎」かもしれません

親知らずの周りの歯茎がめくれて痛い

親知らずが生えてきて歯茎がめくれているのは大丈夫?放置してはいけない理由と対処法

親知らずの周囲で歯茎がめくれている状態は、多くの場合「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」という炎症が起きています。痛みや腫れがなくても、放置すると重度の感染症や隣の歯のトラブルを引き起こすことがあるため、早めの受診が必要です。

この記事はこんな方に向いています

  • 親知らずが生えてきて歯茎が赤く腫れている、またはめくれている方
  • 痛みや違和感はあるが、抜歯すべきか迷っている方
  • 親知らずのケアや正しい歯磨き方法を知りたい方
  • 痛みが出る前にできる予防策を知りたい方

この記事を読むとわかること

  1. 親知らずが生えると歯茎がめくれる理由
  2. 放置することで起こるトラブルとその仕組み
  3. 早期に行うべき治療や応急処置
  4. 歯茎の炎症を防ぐケア方法と予防策
  5. 抜歯の判断基準と術後の注意点

 

親知らずが生えてきて歯茎がめくれているのはどんな状態?

親知らずが生える際、歯茎の一部が被さったままになることがあります。この「歯肉弁(しにくべん)」と呼ばれる部分の下に歯垢や食べかすがたまり、炎症を起こすのが「智歯周囲炎」です。初期の段階では軽い違和感や出血程度でも、次第に痛みや腫れ、口が開けにくいなどの症状へ進行します。

親知らずの周囲で歯茎がめくれているのは、炎症が起きているサインです。早めのケアが必要です。

親知らずは奥歯のさらに奥に生える永久歯で、20歳前後に萌出します。しかし現代人は顎が小さいため、親知らずがまっすぐ生えずに斜めや横向きに生えるケースが多く見られます。

このとき、歯茎の一部が完全に被さりきらず「めくれたような状態」になります。

この部分は歯ブラシが届きにくく、

  • 歯垢や食べかすが溜まりやすい
  • 細菌が繁殖しやすい
  • 炎症が慢性化しやすい

という特徴があります。

これが智歯周囲炎のはじまりです。放置すると周囲の歯ぐきや骨に炎症が広がり、発熱やリンパの腫れを伴うこともあります。

なぜ歯茎がめくれたまま放置すると危険なの?

めくれた歯茎の下では細菌が増殖しやすく、歯周病菌が繁殖します。これを放置すると、炎症が広がり隣の歯の根まで感染することがあります。重症化すれば、顎の骨に膿がたまり、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。

放置すると感染が広がり、隣の歯や骨にまで影響します。早期対応が重要です。

放置によって起こる主なトラブルとその理由

トラブル内容 起こる理由 放置した場合の影響
智歯周囲炎(ちししゅういえん) めくれた歯茎の下に歯垢や細菌が入り込み、炎症を起こす 痛み・腫れ・膿がたまり、発熱や顎の腫れを伴うことも
隣の歯の虫歯・歯周病 細菌が隣の歯の根元にまで広がる 健康な奥歯まで失うリスクがある
顎関節炎・リンパ節炎 炎症が深部や首周囲まで波及 顎の開閉が困難になったり、リンパの腫れ・痛みが出る
全身への感染 免疫低下時に細菌が血流に乗って全身へ 高熱や倦怠感、まれに敗血症などの重症感染へ

親知らずの周囲の歯茎は、食べかすが残りやすく細菌の温床となります。その結果、最初は軽い腫れや違和感だけでも、炎症が深部へ進行してしまうことがあります。

特に、

  • 親知らずが斜めに生えている
  • 一部しか頭を出していない
  • 隣の歯と密着している

といったケースでは、セルフケアだけでの改善は困難です。見た目が軽い症状でも、早期に歯科医院での洗浄や抗生剤治療を受けることで悪化を防げます。

放置による主なリスク

  1. 隣の歯の虫歯・歯周病 → 親知らず周囲の細菌が隣の歯にも感染。
  2. 智歯周囲炎の悪化 → 膿がたまり、顎の腫れや痛みが強くなる。
  3. 顎関節炎やリンパ節炎 → 炎症が顎や首まで波及することがある。
  4. 発熱・倦怠感 → 感染が全身に広がると発熱するケースもある。

これらのトラブルは、親知らずが半分埋まったままの状態で特に起こりやすいです。歯茎の「めくれ」は細菌の温床となるため、痛みがなくても歯科で確認してもらうことが大切です。

関連ページ:親知らずが痛い!どうすればいい?

どんな症状が出たら早めに歯科医院へ行くべき?

親知らずの炎症

「少し痛いだけだから」「腫れは数日で引くだろう」と思って放置するのは危険です。歯茎のめくれが原因の炎症は、見た目以上に深部まで進んでいることがあり、専門的な処置が必要です。下記の症状があれば、早めに受診をおすすめします。

痛みや腫れ、口の開けづらさを感じたらすぐに受診を。

受診の目安になる症状

  • 歯茎が赤く腫れている
  • 歯茎を押すと膿が出る
  • 噛むと痛い、または違和感がある
  • 口が開けにくい、あごが重い
  • 発熱、のどの痛み、耳の下の腫れがある

これらは炎症が広がり始めているサインです。歯科医院では、炎症の程度に応じて洗浄・抗生剤・鎮痛薬・抜歯などの処置を行います。早期の受診ほど治療が軽く済み、痛みも少なくなります。

自宅でできる応急処置とセルフケア方法は?

頬を冷やす

強い痛みが出たときは、無理に歯を磨いたり押したりせず、清潔な状態を保つことが最優先です。腫れが強い場合は冷やし、痛み止めを適切に使いましょう。ただし、あくまで応急的な対処であり、必ず歯科受診が必要です。

清潔に保ち、冷やして炎症を抑えるのが基本です。早めの受診を忘れずに。

自宅での応急ケアポイント

  1. うがいはぬるめの水でやさしく → 強いうがいは炎症部を刺激します。
  2. 冷却 → 頬の外側からタオルで包んだ保冷剤を当て、熱感をやわらげます。
  3. 市販の鎮痛薬を使用 → 痛みが強い場合のみ、一時的に使用します。
  4. 刺激の強い食べ物を避ける → 辛いもの、熱いもの、硬いものは炎症を悪化させます。

清潔を保つことが何より重要です。特に寝る前は軽くうがいをして、細菌の増殖を抑えましょう。ただし、痛みや腫れが続く場合は応急処置では治らないため、必ず歯科医院で根本治療を行う必要があります。

治療方法にはどんなものがある?抜歯が必要な場合は?

治療法は、炎症の程度と親知らずの生え方によって異なります。軽度の場合は洗浄や薬で改善できますが、繰り返すようであれば抜歯が勧められます。抜歯は局所麻酔下で行われ、痛みはほとんどありません。

軽度なら薬で治療、再発を繰り返すなら抜歯が選択肢となります。

主な治療内容

  1. 洗浄と消毒 → 歯茎のめくれた部分を清掃し、細菌を除去。
  2. 抗生剤・鎮痛剤の処方 → 感染と痛みを抑える。
  3. 親知らずの抜歯 → 再発防止や隣の歯を守る目的で行う。

抜歯は恐いイメージがありますが、歯科用CTで骨や神経の位置を正確に確認した上で安全に行えます。多くの場合、抜歯から数日で痛みや腫れが軽減し、周囲の歯茎の健康も回復します。

再発を防ぐための日常ケアと健診のポイント

定期健診

歯茎のめくれを再発させないためには、毎日の丁寧な歯磨きと定期的な歯科健診が欠かせません。特に親知らずの周囲は磨き残しが多いため、補助具の使用が効果的です。

清潔な口内環境を維持し、定期健診で早期発見を。

再発予防のポイント

  1. 小さめの歯ブラシで奥まで磨く
  2. デンタルフロスや歯間ブラシを併用する
  3. 洗口液で殺菌・炎症予防
  4. 定期的に歯科健診を受ける(3〜6ヶ月に1回)

これらを習慣化することで、親知らず周囲の炎症を防ぎやすくなります。
また、歯科医院で定期的にクリーニングを受けると、歯垢や歯石の蓄積を減らし、再発リスクを最小限にできます。

まとめ

早めの受診で将来のトラブルを防ぐ

親知らずが生えてきて歯茎がめくれている状態は、自然に治ることはほとんどありません。放置すれば炎症が広がり、隣の歯や顎にまで影響を及ぼすことがあります。

  • 早期に受診するほど治療は軽く済む
  • 定期健診で再発を防げる
  • 清潔な口内環境が将来的なトラブルを防ぐ

歯茎がめくれている、痛い、腫れている、そんな症状が出たら、「そのうち治る」と考えず早めに受診しましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック