歯と口の基礎知識

抜歯後に注意すべきこととは?

抜歯後に注意すべきこととは?

虫歯が悪化した場合や矯正治療前の便宜抜歯、または親知らずの抜歯の後のケアが適切に行われなかった場合、不快感や合併症を引き起こす可能性があります。抜歯後の正しいケアはスムーズな治癒に繋がります。抜歯後に注意すべきポイントと、安全で効果的な回復のためのアドバイスについてご説明します。

抜歯直後の対処法

抜歯直後の24時間は、特に注意が必要です。この24時間の間は、出血に対する対応と、腫れを最小限に抑えるための対処が中心となります。

1. 出血のコントロール

抜歯後の出血は自然な反応です。ガーゼを傷口に当てて軽く噛んで圧力をかけることで、出血は通常は数時間で自然に止まります。出血が止まるまでの間は、お口の中が気持ち悪いかもしれませんが、何度もうがいをしないように気を付けましょう。

2. 腫れを最小限に抑える方法

腫れは抜歯後によく見られる反応の一つで、歯周組織が傷ついたことによって起こります。顔の外側からタオルでくるんだ保冷剤や氷嚢を20分当てて10分休むことを繰り返すと、腫れを抑えることが出来ます。

3. 痛みに対する対処

痛みは個人差がありますが、歯科医院から出された鎮痛剤を服用することで、痛みやうずく感じを軽減できます。薬を飲んでも痛みが治まらない場合は、追加で薬を飲んでも良いかどうか、歯科医院に問い合わせましょう。

4. 抜歯後の食事の選択

抜歯後は食事の選び方にも気を付けましょう。

食べていいもの

やわらかい食べ物、冷たい食べ物は傷口に刺激が少なく、消化もしやすいためお勧めです。例えば、プリン、アイスクリーム、スムージー、スープなどがあります。

栄養価の高い食品を選ぶことも重要です。ビタミンやミネラルが豊富な食品を取り入れることで、体の回復を助けます。

避けるべきもの

硬いもの、粘着性のあるもの、または高温の食品は避けてください。また、ストローの使用は避けるようにして、傷口に負担をかけないようにしましょう。

硬い食べ物や粘着性のある食べ物は避けましょう。これらは傷口にダメージを与えたり、食べかすが傷口に詰まって不衛生な状態を起こす原因になります。

熱い食品も避けるべきです。温度が高い食品は、傷口の敏感な部分を刺激し、痛みを引き起こす可能性があります。

5. 抜歯後の生活習慣

飲酒と喫煙

アルコールとタバコは、回復を遅らせ、合併症のリスクを高める可能性があります。特に喫煙は、口腔内の血流を悪化させ、傷の治りを遅くする原因になり、治癒過程に悪影響を及ぼします。

抜歯後は、少なくとも24時間は喫煙を避け、アルコールは医師の許可が出るまで控えることをお勧めします。

運動

抜歯直後は、激しい運動や重い物を持ち上げることは避けてください。これらの活動は血圧を上昇させ、傷口から出血しやすくなる可能性があります。

軽い散歩などは大丈夫ですが、ジョギングなどは暫くの間は控えましょう。

抜歯後の食事や生活習慣に注意を払うことで、より快適な回復期間を過ごすことができます。適切なケアを行うことで、合併症のリスクを最小限に抑え、健康な口腔環境を維持することができます。

抜歯部位を清潔に保つ

抜歯後の口腔衛生は感染予防と速やかな回復のために不可欠です。

1. 歯磨きとフロス

歯磨きをする時は抜歯した部位の周辺を避けて、他の歯は通常通り磨きましょう。フロスも使用可能ですが、抜歯部位には触れないように注意しましょう。

歯磨き

抜歯後、最初の24時間は傷口周辺を避けて歯磨きを行ってください。その後、傷口の近くの歯を力を入れずにそっと磨きましょう。電動歯ブラシの使用は避け、柔らかい毛の歯ブラシを使用することをお勧めします。

デンタルフロス

抜歯部位を避けて、他の歯には通常通りフロスを使用します。フロスを使用する際は、傷口に直接触れないように注意してください。

2. 抗生物質やうがい薬の使用

抗生物質

医師が抗生物質を処方した場合は、指示に従って完全に服み切るようにしましょう。抗生物質は、感染を防ぐために重要です。

うがい薬

抜歯後の口腔ケアにうがい薬を使用することがあります。うがい薬を使用する際は、傷口を刺激しないように優しくうがいをしてください。歯科医師によっては抜歯後にうがい薬を使用しない場合もあります。

抜歯後の口腔ケアは、傷の治癒に大きな影響を与えます。適切なケアを行うことで、感染リスクを減らし、順調に回復することが出来ます。

合併症への対応

抜歯後の痛みや不快感は一時的なものですが、異常な症状が現れた場合は早めに医師の診察を受けることが重要です。

ドライソケット

抜歯後の痛みが数日経っても改善せず、むしろ悪化する場合は、ドライソケットの可能性があります。この状態は、抜歯部位を覆う血餅(口内に出来るかさぶたのようなもの)が失われたり、正常に形成されなかったりした場合に発生します。強い痛みが起こった時はドライソケットが疑われますので、すぐに医師に相談しましょう。

感染

抜歯部位が赤く腫れたり、発熱や臭いが伴う場合は、感染を起こしている可能性があります。抗生物質の処方が必要になることもありますので、早急に歯科医師に相談してください。そのまま放っておくと悪化する場合があります。

定期健診と今後のケアについて

抜歯後のケアは、抜歯した部位が治るまでの間だけのものではありません。長期的にお口の健康を維持するためには、定期的な健診と適切なケアが不可欠です。

1. 定期健診

抜歯後は歯科医師の指示に従って健診を受け、回復状況を確認しましょう。

2. 虫歯や歯周病の予防

定期的に歯科健診を受けて専門の器具で歯のクリーニングをしてもらい、歯垢や歯石を歯に残さないようにしましょう。定期健診を受けると、虫歯や歯周病の早期発見が可能になり、早い段階で適切な対処が出来ます。

抜歯後に注意すべきことに関するQ&A

抜歯直後の出血を止めるためにはどのような対処が必要ですか?

出血をコントロールするには、ガーゼを傷口に当てて軽く噛むことで圧力をかけます。これにより、出血は通常数時間で自然に止まります。この間、頻繁にうがいを避けることが重要です。

抜歯後に腫れを最小限に抑えるための方法は何ですか?

腫れを最小限に抑えるには、顔の外側からタオルでくるんだ保冷剤や氷嚢を20分間当て、10分間休むことを繰り返すことが効果的です。これにより、歯周組織の腫れが抑えられます。

抜歯後に痛みに対処するにはどうすればよいですか?

痛みに対する対処として、歯科医院から出された鎮痛剤を服用します。痛みが治まらない場合は、追加で薬を飲む前に歯科医院に相談することが推奨されます。また、強い痛みが続く場合も早めに歯科医院にご相談ください。

まとめ

抜歯後の出血や腫れの管理、痛みへの対処、食事や生活習慣などについてご説明しました。抜歯後の適切なケアは、感染やドライソケットなどの合併症を避け、歯茎を早期に回復させるために重要です。抜歯後も定期的に歯科健診を受けるようにして、残っている健康な歯を長く保てるようにしましょう。

抜歯後に注意すべきことは、適切なアフターケアが重要です。ここでは、2つの研究を基に、抜歯後のケアについての情報を提供します。

1. 出血の管理
Gauri Guptaらによる研究では、抜歯後の出血を管理するために、局所的にヘモコアグラーゼを使用することの効果について検討されています。ヘモコアグラーゼは出血停止時間、痛み、腫れ、創傷治癒およびその他の術後合併症に関して、通常の生理食塩水圧迫パックと比較して有意な差があることが示されました。これにより、抜歯後の出血、痛み、腫れを減少させ、創傷の治癒を促進することが示唆されています。【Gauri Gupta, Muthusekhar M.R., & Santhosh Kumar, 2018

2. 創傷治癒の促進
Milenac Irieらによるレビューでは、放射線治療を受ける頭頸部がん患者の抜歯前後の歯周治療について議論されています。放射線治療前の歯周疾患の治療は、将来的な抜歯を避け、骨壊死の発展を減少させるために主に必要です。放射線治療を受けた患者の歯周治療には、スケーリングとルートプレーニング、有罪歯の抜歯、局所的および全身的な抗菌療法が含まれます。抜歯は放射線治療の最初の日から少なくとも14日前に計画されるべきです。治療中および治療後には特別なケアと洗口が推奨されます。【Milenac Irie et al., 2018

抜歯後の適切なケアは、出血管理と創傷治癒の促進に重点を置くことが重要です。これらの研究は、抜歯後のケアにおける特定のアプローチの有効性を示しています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック