飛行機の機内で急に歯が強く痛み出したので、到着後はすぐに歯の診療を受けたいということが、実際にあります。搭乗前は何ともなかったのに、今は痛みで食事も出来ない。一刻も早く診て欲しいというものです。
こうした場合は、歯医者に着くまでの間は、出来るだけ氷で痛む部分を冷やすと、痛みが少し和らぎます。口の中に氷を含んだり、氷をタオルに包んで外側から冷やすと良いでしょう。冷たい水を口に含んで冷やすのも良いですが、炭酸水は刺激で痛みが増すことがあるので、厳禁です。
飛行機の機内で歯が痛くなった時の歯医者での処置
レントゲンでお患者さんの口の中がどうなっているかをみると、歯の根の先に膿がたまって、その部分が痛みの原因とわかりました。膿は周囲の骨を溶かして歯茎の方まで拡がってきているため、まず歯茎を切って膿を出さなければなりません。
歯の痛みというと虫歯の痛みを連想される方が多いと思いますが、歯の根に出来た膿の袋による痛みも強烈です。歯茎の痛みが頭痛として感じられることもあります。
処置としては、まず麻酔をしてから歯茎を切開して、膿を吸引して外に出した後、患部をしっかりと消毒して止血します。そして炎症と痛みを抑えるために、消炎鎮痛剤と抗生剤を処方します。
膿について
歯の根(歯根)部分に膿がたまることを「歯根嚢胞」と呼びます。歯根は健康な状態では無菌ですが、細菌感染を起こすと歯根に炎症が起こります。
身体の中には免疫細胞があり、その代表が白血球です。身体の中に細菌が入り込むと、白血球などがそれを身体から排除しようとして、炎症が起こります。
膿は、排除された細菌の残骸や白血球です。
歯根が細菌に感染すると、はじめは腫れや痛みなどの自覚症状はありません。しかし徐々に歯茎の腫れが起こり、噛むと痛みを感じたり、歯が浮いたような違和感を感じることもあります。さらに重症になると、顎の骨や歯を溶かしてしまいます。
痛みが酷いときは麻酔がききにくい
治療の際に困るのは、こういった歯や歯茎の痛みの激しいケースでは、麻酔がききにくくなってしまうということです。
炎症を起こすと患部はpHが中性から酸性に傾きます。そして、麻酔薬はアルカリ性です。そのためアルカリ性である麻酔薬が炎症によって中和されて、麻酔がききにくくなります。
炎症が激しくて麻酔がききにくい場合は、何度か麻酔を追加して治療を行います。もちろん麻酔薬を入れられる量には上限がありますので、いくらでも麻酔を追加できるわけではありません。
飛行機で歯が痛くなりやすい理由
飛行機の中で歯の激痛を起こす理由は、気圧の変化です。そのため飛行機での旅行中、特に海外旅行中は歯が痛くなるなどのトラブルが増えます。
台風や低気圧が近づくと、頭痛がする方がおられますが、これも気圧の変化によって自律神経が影響を受け、交感神経と副交感神経のバランスが崩れた結果起こるものです。
国際線では高度1万メートルという上空を飛びますし、欧米やアフリカの便ではフライトが長時間に及ぶため、身体は気圧の変化を受け続けます。
飛行機の機内の気圧が低下すると歯の内側にある「歯髄腔」と呼ばれる空洞の中の空気が膨張して、歯の神経を刺激します。虫歯があって穴が開いている場合は、特に激しい痛みになる可能性があります。
気圧の変化によって、標高の高い山や、スキューバダイビングなどでも同じことが起こります。このような気圧の変化のある場所へ行く場合は、歯の治療を済ませてからにしましょう。治療中や治療直後に行くのは危険です。
飛行機の機内で歯がズキズキ痛み出したに関するQ&A
飛行機の機内で歯がズキズキ痛む原因は、気圧の変化です。気圧の低下によって、歯の内側にある空洞の中の空気が膨張し、歯の神経を刺激することが主な原因です。
飛行機の機内で歯が痛くなった場合、まず歯医者では痛みの原因を特定するためにレントゲン検査を行います。膿のたまった部分が確認された場合、処置としては歯茎を切開して膿を取り除き、消毒と止血を行います。また、炎症と痛みを抑えるために消炎鎮痛剤と抗生剤の処方が行われることもあります。
歯の根に膿がたまることで起こる痛みの主な原因は、細菌感染による炎症です。細菌感染が起きると、身体の免疫細胞である白血球が炎症を引き起こし、膿が形成されます。膿が周囲の骨や歯茎に広がることで痛みが生じます。
まとめ
飛行機の機内をはじめ、登山やスキューバダイビングによっても歯痛が起こる場合があります。急に歯が痛み出して旅行が台無しにならないためにも、日頃から歯の定期健診をお受け頂き、悪い歯があれば早めに治療を受けるようにしましょう。