歯と口の基礎知識

自分の歯を長持ちさせるためにはどうすれば良いですか?

自分の歯を長持ちさせるためにはどうすれば良いですか?

歯を失うことなくずっと自分の歯で生活することは、みんなが望んでいることだと思います。そこで、80歳になっても20本の歯を残す8020運動をご紹介させていただきたいと思います。

歯を失う2大原因

歯

日本人が歯を失う2つの原因は、「歯周病」と「虫歯」です。歯周病と虫歯はどちらもお口の中に棲む細菌による感染症で、歯についた歯垢や歯石の中に細菌が棲みつくことから起こります。

歯周病

歯周病は、お口の中のに棲む歯を支えている組織が細菌の出す毒素で破壊される病気です。放っておくと歯を支えている骨が溶かされ、歯がグラグラになって抜けてしまいます。特に40代以上では歯周病で歯を失うケースが増えます。

虫歯

虫歯は、虫歯菌の出す酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされて穴があく病気です。エナメル質は人体の中で一番硬い組織ですが、酸に弱いという特徴があります。エナメル質には再生能力がありませんので、虫歯で穴があいてしまうと、もう元に戻りません。そのため、虫歯治療では虫歯菌におかされた部分をきれいに削り取って、詰め物や被せ物による補綴治療を行います。

虫歯や歯周病を防ぐには、歯の表面につく歯垢や歯石を除去して、お口の中から細菌の数を減らすことが重要です。

80歳になっても20本の歯を残す8020運動

8020運動

中高年になって歯を失う原因の多くは、歯周病であることがわかっています。何とかこれを阻止して、生涯、自分の歯で噛むことを目指したいものです。

厚生労働省は、2000年より「健康日本21」という国民健康づくり運動を推進しています。この運動では、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸、QOL(クオリティーオブライフ=生活の質)の向上を目的に、9つの分野にわたって目標や対策を設定されており、この中には歯科保健の分野も含まれています。

歯科保健の分野では、1992年から「8020 (ハチマルニイマル)運動」が推進されてきました。8020運動とは、生涯にわたって自分の歯を20本以上残すことで、健全な咀嚼能力を維持し、健やかで楽しい生活を送ることを目的とした運動です。

健康日本21では8020の実現に向けて、歯の定期検診や歯石除去、歯間部清掃用器具の使用など、虫歯と歯周病の予防についてのいくつかの目標を設定しています。

ところが、現実には残念なことに、80歳以上での平均残存歯数は9本以下と、目標には程遠い状況です。歯周病予防はもちろん、歯の健康に対する意識をさらに高めていく必要があります。

予防歯科医療の先進国と言われるスウェーデンやオランダでは、定期的な歯のメンテナンスが国民に義務づけられています。その結果、80歳になっても平均25本もの歯が残されています。

日本でもいよいよ歯の定期検診の義務化に向けての取り組みが行われています。虫歯や歯周病の原因を理解し、予防すれば、80歳で20本は実現可能です。

80歳で歯を20本以上保つ8020運動の成果

歯科治療では、まず保存治療を前提にしています。できる限り歯を抜かないで保存して、自分の歯で噛めるようにしようというものです。

ただ、保存治療にも限界があります。患者さんの歯の状態を見ながら、保存治療が出来るか、あるいは他の治療法が適しているかを、しっかり相談しながら決めることが大切です。

残っている歯をすぐに抜いてインプラントなどを勧められる場合もあるかもしれません。どのような治療方法であっても、患者さんの希望や要望をきかずに、歯科医師が治療方法を決めて、説明もほどほどにして治療を始めるというのは、良い治療とはいえません。

「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という8020運動のことをご存じでしょうか。1989年より厚生省(現厚生労働省)と日本歯科医師会が推進している運動で、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえる」ことを目的にスタートしました。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができるといわれているため、80歳で20本の歯を維持することを目標にしています。

8020運動が開始された当初は、20本以上を達成している高齢者(後期高齢者:75歳以上)は、10人に1人いるかいないかという状況でした。しかし、2011年の歯科疾患実態調査では、後期高齢者の37%が達成していることが示され、今後も増加が予測されています。

正しい歯磨きの仕方をマスターしましょう

家庭でできる虫歯や歯周病の予防は、毎日の正しい歯磨きです。使いやすい歯ブラシを選び、歯科医師や歯科衛生士の指導を受けて、自分の口内の状態にあった正しい歯磨きの仕方をマスターしましょう。

歯ブラシだけで磨けないところは、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃用具も活用します。特にデンタルフロスを使えるようになると、歯と歯の間や歯と歯茎の間の溝部分から歯垢を除去出来るようになります。

自分の歯を長持ちさせる方法に関するQ&A

スウェーデンやオランダではなぜ80歳になっても歯が残っている人が多いのですか?

スウェーデンやオランダでは定期的な歯のメンテナンスが国民に義務づけられており、予防歯科医療が進んでいるため、歯を保持することが多いです。

歯磨きだけでなく、どのような補助清掃用具が歯の予防に役立つのですか?

歯磨きだけで届きにくい部分には、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃用具を活用することが効果的です。特にデンタルフロスは、歯と歯の間や歯と歯茎の間の溝部分の歯垢を除去するのに役立ちます。

8020運動の推進により、日本の高齢者の平均残存歯数はどれくらい増えましたか?

2011年の歯科疾患実態調査によると、後期高齢者の37%が20本以上の歯を保持しており、増加傾向にあります。

まとめ

歯のキャラクター

「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という8020運動についてご紹介しました。自分の歯を長く使っていくために一番大事なのは、毎日の歯磨きを正しく行うことです。正しく出来ているかのチェックのためにも、3~6ヶ月に1度は歯科医院での定期検診を受診してクリーニングをお受け下さいね。

自分の歯を長持ちさせるためには、適切な口腔衛生習慣を維持することが重要です。以下に、歯を健康に保つための推奨事項を示す研究を2件紹介します。

1. 定期的な歯科検診
歯科検診を定期的に受けることは、歯と歯肉の健康を維持し、早期に問題を発見して対処する上で非常に重要です。Laila Mohammed Alanaziらによる研究では、矯正治療中の歯のケアについて検討されており、良好な口腔衛生を維持することが強調されています。矯正装置をつけている間は、歯垢が蓄積しやすくなり、歯肉炎や歯周病のリスクが高まるため、定期的な歯科検診と専門的なクリーニングが特に重要です。【Laila Mohammed Alanazi et al., 2021

2. 正しい歯磨き方法の実践
毎日の正しい歯磨きは、歯と歯肉の健康を維持する基本です。Misaki Junらの研究によると、集中治療室(ICU)の患者の口腔衛生状態は一般に良くないことが多く、効果的な口腔ケアが必要です。この研究から、ICUに限らずすべての人に対して、正しい歯磨き方法を学び、実践することの重要性が示されています。歯磨きは、歯ブラシを45度の角度で歯肉に対して優しく動かし、歯と歯肉の境界を丁寧に磨くことが推奨されています。【Misaki Jun et al., 2021

これらの研究は、定期的な歯科検診の受診と正しい歯磨き方法の実践が、自分の歯を健康に保ち、長持ちさせるために非常に重要であることを示しています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

▶プロフィールを見る

梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック