歯と口のトラブル

ブリッジによる負のスパイラルとは?歯を失った時の治療選択で後悔しないために

ブリッジによる負のスパイラルとは?

梅田クローバー歯科クリニック 歯科医師 久野 喬

ブリッジによる負のスパイラルとは?

ブリッジ治療は、失った歯を手軽に補える反面、両隣の健康な歯に大きな負担をかけ、連鎖的に歯を失いやすくなる「負のスパイラル(連鎖喪失)」に陥るリスクがあります。どの治療法を選ぶか、そして治療後にどんなケアを続けるかが、お口全体の健康を左右します。

歯を失った時、多くの方がまず検討するのが「ブリッジ治療」です。しかし、その場しのぎの選択が、のちに残っている歯まで次々に失う“負のスパイラル”を招くことがあるのをご存知でしょうか。この記事では、ブリッジ治療がどうして悪循環を生むのか、その理由や予防策、他の治療法との違いも分かりやすく解説します。

この記事はこんな方に向いています

  • 抜歯後の治療方法で迷っている方
  • ブリッジ治療を勧められた方や既にご検討中の方
  • 歯を長持ちさせたい、これ以上歯を失いたくないと考えている方
  • 失った歯の治療デメリットやリスクを正確に知りたい方

この記事を読むとわかること

  1. ブリッジ治療における「負のスパイラル」とそのメカニズム
  2. ブリッジのメリットとデメリット/他の治療法との違い
  3. 治療前に知っておきたい後悔しないためのポイント
  4. 連鎖的に歯を失わないための予防策とケア方法

 

大事なのは歯を抜けたまま放置しないこと

歯を抜けたまま放置してはダメ

口腔内環境を良くして歯周病を防ぎ、歯を長持ちさせることが健康長寿に繋がることは、良く知られていると思います。しかし実際に歯を失ってしまった場合に、心がけなければいけないことがあります。

それは、歯を抜けたままで放置してはいけないということです。歯を失った後に、どのような治療を受けるかが、今後の食生活を含んだ人生に大きな影響を与えます。

歯を失っても義歯を作ってしっかり装着している方は、歯を失ったままで放置している方と比べると、認知症のリスクが少ないという調査結果があります。

ブリッジでの治療とは

セラミックの被せ物(ブリッジ)歯を1~2本失った時に、歯科で一般的に行われる治療法がブリッジです。
まず失った歯の両隣の歯を削って土台を作ります。そして土台を連結させた形の人工の歯をかぶせて、抜けた部分を補います。失った歯が1本の場合は、3本連結のブリッジということになります。

ブリッジの治療の流れ

土台となる歯を削らなければなりませんが、ブリッジは見た目も自然で違和感の少ない治療法ですので、歯を失った場合に最初に選択肢にあげられることが良くあります。保険適用で治療出来ることも、ブリッジのメリットとしてあげられます。

さて、ブリッジは一見良さそうな治療ですが、何故負のスパイラルを起こすと言われるのでしょうか?

ブリッジ治療後に起こりやすい「連鎖的な歯の喪失」とは?

ブリッジ治療後に起こりやすい「連鎖的な歯の喪失」とは、一本歯を失ってブリッジを選択した場合に、時間の経過とともにさらに歯を失いやすくなる悪循環が生じる現象です。

連鎖喪失が起こるメカニズム

ブリッジ治療では失った歯の両隣の健康な歯を大きく削って支えにします。その結果、削られた歯は神経を取ることも多くなり、歯そのものがもろくなります。また、「3人で担当していた仕事を2人が担う」ように、残った歯に本来以上の咬合負担が分散されます。これにより虫歯や歯根破折、支台歯のダメージが進行しやすくなり、最終的に支台の歯まで抜歯が必要になるケースも少なくありません。

清掃性と二次カリエス、歯周病のリスク

ブリッジの形状や構造上、ポンティック(ダミー歯)の下など、汚れがたまりやすいデッドスペースができやすくなります。この部分は歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークや食べかすが滞留し、虫歯や歯周病が発生しやすくなるため、さらに歯の寿命を縮める要因となります。

顎骨やかみ合わせ全体への影響

支えとなる歯を続けて失うと、歯列のバランスが崩れ「隣の歯が傾く」「嚙み合わせがズレる」現象が起こります。歯が抜ける→隣の歯が倒れる・移動する・噛み合わせが変わる→次の歯が寿命を迎える、という悪循環が“ドミノ倒し”のように起こりやすくなります。これが「連鎖的な歯の喪失」です。

対策と意識すべきポイント

  • 定期的なメンテナンスと正しいセルフケアが最重要です
  • インプラントや部分入れ歯など、支台歯を傷めにくい治療法の検討も一案です
  • 抜けたまま放置すると、かみ合わせや顎骨が急速に痩せ、さらなる欠損・義歯不適合を招きます

ブリッジ治療を選ぶ際は、この連鎖喪失リスクを理解し、将来を見据えた治療選択と継続的な口腔ケアが欠かせません。

ブリッジのメリット

ブリッジの図
  1. 固定式で安定感が高い
    → 両側の歯にしっかり固定されているため、噛んだ時にズレない安定感があります。
  2. 審美性が高い・見た目が自然
    → セラミック製やジルコニア製など材料を選べば、天然歯に近い見た目が可能です。
  3. 咬合機能や発音の回復に優れる
    → しっかり咀嚼でき、失った歯で困りがちな発音の改善にも役立ちます。
  4. 比較的短期間で治療が完了
    → 通常2〜3回、2〜4週間程度で治療が終わります。
  5. 保険適用のケースが多い
    → 保険の材料で作成できる場合も多く、経済的な負担を抑えられます。
  6. 外科的手術なしで治療できる
    → インプラントのような外科処置が不要なため、患者の身体的リスクも少ないです。

このように、ブリッジ治療は短期間で機能や見た目を回復できる有効な選択肢となりますが、適切なケアやメンテナンスを続けることが長持ちのポイントとなります。

ブリッジのデメリット

ブリッジ治療のデメリットには、健康な歯への大きな負担や将来的なリスクがあります。ブリッジは短期間で見た目や咬合機能の回復ができる一方で、長期的に見るとさまざまなデメリットが存在します。
主なデメリット

1. 両隣の健康な歯を大きく削る必要がある

ブリッジ装着のためには、失った歯の両隣の歯(支台歯)を大きく削らないといけません。これはもともと健康だった歯を犠牲にすることになり、歯の寿命を縮める直接的な原因となります。

2. 支台歯の寿命が短くなる・神経を抜く場合がある

支台歯は通常以上の咬合圧を受け続けるため、将来的に虫歯・歯根破折・歯周病などで失われるリスクが高まります。また、歯を大きく削ることで神経を抜く場合も多く、その場合さらに歯の耐久性は低下します。

3. 清掃性が悪く虫歯・歯周病リスクが増加

人工歯(ポンティック)と歯ぐきの間にプラークや食べかすが溜まりやすく、フロスが通せないためセルフケアが難しくなります。その結果、支台歯の根元やブリッジの下で虫歯(二次カリエス)や歯周病が起こりやすくなります。

4. 違和感やものが挟まりやすい

入れ歯に比べて違和感は少ないものの、特に人工歯下に食べかすが入りやすく、異物感や不快感を訴える方も少なくありません。

5. 耐久性・再治療のリスク

ブリッジの寿命は8〜10年程度といわれ、10年後には約7割が再治療対象になるとも報告されています。支台歯がダメになるとさらに大きなブリッジや別の治療(例えば部分入れ歯)に切り替えざるを得ない場合もあります。

ブリッジや部分入れ歯は、周りの歯で支えるため、他の歯に負担をかけてその歯の寿命を削ってしまい、総入れ歯への道につながってしまうといわれています。これがブリッジによる「歯を失う負のスパイラル」ということになります。

連鎖的に歯を失わないための予防策とケア方法

正しいブラッシングと補助清掃の徹底

歯と歯ぐきの境目、奥歯の裏など磨き残しやすい部分を丁寧に磨くことが大切です。力を入れすぎず、柔らかめの歯ブラシを使い、毛先を細かく動かす「バス法」が推奨されています。また、歯ブラシだけで取り切れない歯間の汚れはデンタルフロスや歯間ブラシを毎日使って除去しましょう。

定期的な歯科受診とプロフェッショナルケア

3〜6ヶ月ごとに歯科医院で検診を受けることで、初期の虫歯や歯周病を早期発見できます。プロによるクリーニングで歯石やバイオフィルムを除去し、セルフケアでは落としきれない汚れをきれいにすることが、歯の健康維持に欠かせません。

食生活と生活習慣の見直し

糖分の摂取頻度を減らし、酸性飲食物を摂った後はすぐに歯を磨かず水でうがいをするなど、口腔内の環境を整えることが重要です。よく噛む習慣も歯ぐきへの刺激となり健康維持に効果的です。喫煙や過度な飲酒は歯周病のリスクを高めるため控えましょう。

インプラントなどの適切な治療選択

ブリッジや部分入れ歯は支台歯に負担をかけるため連鎖喪失のリスクがあります。必要に応じてインプラントなど、周囲の歯に負担がかかりにくい治療も検討しましょう。インプラントは独立して顎の骨に固定され、口腔の健康寿命を延ばす効果が期待できます。

以上のように、毎日の丁寧な自己管理と歯科医院での定期ケアが、連鎖的な歯の喪失を防ぎ健康で長持ちする歯を守る基本です。

ブリッジに関するQ&A

抜歯後どのくらい経てばブリッジに出来ますか?

抜歯後は歯茎が怪我をした状態になっていますので、歯茎が治るのを待ってからブリッジの治療に入ります。前歯の場合は目立つため、歯のない状態を避けるために一旦仮歯をおつけします。

ブリッジによる治療は将来的に歯を失うことに繋がるのでしょうか?

はい、ブリッジによる治療は支えとなる両隣の歯を削る必要があります。この削られた歯には負荷がかかり、歯の寿命が短くなる可能性があります。

ブリッジで治療した後、支えている歯が抜歯になった場合はどうなりますか?

支えていた歯が抜歯になった場合、再度ブリッジ治療が必要となり、新たな支えの歯として4本連結のブリッジになる可能性があります。

まとめ

歯を失った場合の治療としてブリッジを選ぶと、将来的にブリッジの土台となっている歯を失うリスクがあります。隣の歯を傷めない治療を選ぶ場合は、インプラントをお勧めしています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

▶プロフィールを見る

梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック