
患者さんが歯のクリーニングや定期健診にお越しになった際には、歯周ポケットの深さを測る等の検査を行って歯茎の状態を調べます。
歯周病は主に中高年の方がかかるものだと思われがちですが、現代では歯周炎にかかっている子どもが増え、歯周病予備軍といわれています。
歯周病の検査内容

歯周病の検査とは、プローブと呼ばれる専用の細い器具を歯と歯茎の間に差し込んで、歯周ポケットの深さを測っていくというものです。主に歯科衛生士が行います。
歯周ポケットは深ければ深いほど歯周病が進行しているとされ、歯茎からの出血がないか、膿が出ていないかもチェックし、歯に力をかけた時に歯がぐらついていないかも確認します。もちろん目視で歯ぐきの腫れや色のチェックもされます。
一般的には歯周ポケットの深さが3ミリ未満なら健康な歯茎といえます。3ミリ程度の場合は初期の歯周病、4~6ミリ程度で中度の歯周病、それ以上の深さになると歯周病がかなり進行していると診断されます。また、必要に応じてレントゲン検査で歯を支えている骨の状態や骨密度を測る場合もあります。
これらの数値はカルテに記録され、歯科衛生士が管理します。数値化されているので、改善または悪化した場合にすぐにわかるようになっています。また、プローブを歯周ポケットに差し込むと、炎症の起こっている歯は出血を起こします。
歯周病はかなり進んでからでないと自覚症状がないため、これらの検査によって歯周病の進行具合を把握します。
歯周病の一般的な症状
- 歯磨きすると歯茎から血が出る
- 歯茎が赤黒くはれている
- 歯がグラグラする
- 口臭が気になる
- 歯の根元が露出してきた
- 歯肉からうみがでる
このような自覚症状が出ている方は、既にある程度歯周病が進んでいます。歯周病は治療によって改善する可能性がありますので、すぐに歯科医院で歯周病治療を受けていただけるよう、お勧めします。
歯周病予防のためのクリーニング
歯周病が歯を失うことに繋がる怖い病気であることは、最近よく知られるようになりました。また、歯周病菌が高血圧や糖尿病等の全身の病気を引き起こす原因になっているという研究結果もあります。過度に怖がる必要はないのですが、患者さん一人ひとりが歯周病の怖さを理解することで、積極的な歯周病予防につながります。
歯周病予防としては、三ヶ月に一度くらいの頻度で歯科医院での定期健診を受けて、歯周病が進んでいないかどうかのチェックを受けることをお勧めします。
歯周病の原因となる菌は歯周ポケットの内部にバイオフィルムをつくって棲みつきます。バイオフィルムはお口の中以外にも存在していて、例えばお風呂の排水溝やキッチンのシンクのヌルヌルがバイオフィルムです。そのような細菌の集団が歯の表面にもつくられます。
そして歯周ポケットの内部のバイオフィルムの除去はご家庭での歯みがきでは出来ません。バイオフィルムは歯科医院でのクリーニングでしか落とすことが出来ませんので、定期的にクリーニングや健診のために来院していただくことは、歯周病予防としてとても大切なことです。
位相差顕微鏡で唾液検査
実際にお口の中にはどんな菌がいるのでしょうか。大人の口の中には、300~700種類の細菌が生息しているといわれ、歯をしっかりと磨いて口腔内を清潔にしている人でも1000~2000億個の菌がいるそうです。
腸内にいる善玉菌や悪玉菌という言葉を聞いたことがおありだと思いますが、お口の中にも善玉菌、悪玉菌、日和見菌が存在しています。
歯磨きが不十分だったり、砂糖を過剰に摂ったりすると歯垢(プラーク)がつくられ、悪玉菌の数が優勢になってしまい、虫歯や歯周病の原因菌が増えて口内環境が悪化します。
これらの菌は歯についている歯垢を採取して顕微鏡にセットすることで、観察することができます。顕微鏡で螺旋状の形をしたトレポネーマ・ デンティコーラという菌が活発に動いているのが見られる場合は、歯周病が進行している可能性が高いと考えられます。
歯周病の原因となっている細菌の姿を実際に見ることで、この菌を何とか退治しなくてはという具体的なイメージを持つと、歯周病治療のためのモチベーションが上がります。クリーニング後はこれらの菌が減少しますので、その状態を保つことを目標にすれば良いというわけです。
このように、患者さんの意識を高めることが、歯周病治療では大変有効で、実際に効果が上がっています。
歯周病の検査内容に関するQ&A
定期的な歯科医院での健診、プロフェッショナルなクリーニング、適切な自宅での口腔ケアが歯周病予防として推奨されています。
歯周病菌が高血圧や糖尿病等の全身の病気を引き起こす原因になる可能性があるという研究結果があります。
歯周ポケットの深さが3ミリ未満なら健康な歯茎、3ミリ程度は初期の歯周病、4~6ミリ程度は中度の歯周病、それ以上の深さは歯周病が進行していると診断されます。
まとめ

歯周病検査の目的や方法、歯周ポケットの深さを測定するやり方や結果の見方、お口の中にいる細菌を実査に観察する方法についてご説明しました。
歯周病は完治することは難しいのですが、歯科医院での定期健診・クリーニングを数か月おきに必ず受けていただき、口腔内を清潔にするように心がけながら歯みがき等のセルフケアをすることで、バイオフィルムが再び歯に付着するのを防ぎ、歯周病の進行を遅らせることは十分に可能です。