小児矯正

子どもに矯正が必要かどうか判断するポイントとは?

子どもに矯正が必要かどうか、親が判断するにはどうすればいい?

梅田クローバー歯科クリニック 歯科医師 久野 喬

子どもに矯正が必要かどうか、親が判断するにはどうすればいい?

歯並びや噛み合わせの状態、口呼吸や指しゃぶりの癖など、いくつかのチェックポイントを確認することで判断の目安になります。

この記事はこんな方に向いています

  • 子どもの歯並びが心配な保護者の方
  • 矯正を始めるタイミングを迷っている方
  • 歯科医院で相談する前に自宅で確認したい方

この記事を読むとわかること

  1. 矯正が必要かどうかの判断ポイント
  2. 早期治療が望ましいケース
  3. 自宅でできる簡単チェック方法
  4. 矯正治療を始める最適な時期

 

子どもの矯正が必要かは「噛み合わせ」「口腔習慣」「成長バランス」で判断します

子どもの矯正が必要かどうかを判断するには、「見た目の歯並び」だけでなく、「噛み合わせ」「口呼吸などの口腔習慣」「あごの成長バランス」の3つを総合的に確認することが大切です。これらのバランスが崩れると、歯の健康だけでなく発音や顔の成長にも影響を及ぼします。

見た目よりも、「噛み合わせ」「癖」「成長バランス」で総合的に判断することが重要です。

なぜ子どものうちに矯正の必要性を判断することが大切なの?

成長期の矯正は、あごの骨や筋肉がまだ柔らかく、自然な成長を利用して歯並びを整えられる点が最大のメリットです。矯正が必要なサインを見逃すと、将来大人になってから治療期間が長くなったり、抜歯が必要になったりすることもあります。早期判断が「負担の少ない治療」につながります。

成長を利用できる今こそ、矯正が必要かを早めに見極めることが大切です。

子どものうちに判断した方が良い理由

  1. 骨が柔らかく動かしやすい
    →成長を利用してあごの形を整えることができる。
  2. 習慣の修正がしやすい
    →口呼吸や指しゃぶりなどの悪習慣を早期に改善できる。
  3. 永久歯が正しく生えるスペースを確保できる
    →将来の抜歯や再治療を避けやすい。

これらを早期に対処することで、成長とともに自然に美しい歯並びへ導ける可能性が高まります。

どんなサインが「矯正が必要かもしれない」目安になる?

見た目の歯並びの乱れだけでなく、日常生活の中で「噛みにくい」「口が閉じにくい」「いつも口を開けている」などの様子が見られる場合は注意が必要です。噛み合わせのずれや呼吸の異常が、将来的な不正咬合につながる恐れがあります。

「噛みにくい」「口が閉じにくい」「いつも口が開いている」は注意信号です。

矯正が必要なサインチェックリスト

  1. 食事中によく噛み残しがある、または左右どちらかだけで噛む
  2. 口呼吸をしている(寝ているときも口が開いている)
  3. 指しゃぶりや頬杖の癖がある
  4. 前歯が出ている、または下の歯が前に出ている
  5. 歯が重なって生えている、すき間が多い
  6. 発音しにくい言葉がある(サ行・タ行など)

これらの行動は、見た目の歯並び以上に「機能的な不調」を示すサインです。
一つでも当てはまる場合は、矯正相談を受けるタイミングです。

家庭でできる「子どもの歯並びチェック方法」とは?

歯科医院に行く前でも、保護者の方が日常生活の中で簡単に確認できるチェックポイントがあります。鏡を使って歯の位置や口の動きを観察することで、矯正が必要な傾向を早期に見つけることができます。

鏡と観察で「矯正の必要性」を家庭でも簡単にチェックできます。

家庭でできるチェックポイント

  1. 前歯の位置
    →上下の前歯が深くかぶさっていないか、すき間がないか確認。
  2. 横から見た顔のバランス
    →上あごや下あごが極端に出ていないか観察。
  3. 口の閉じ方
    →自然に口を閉じられるか、それとも唇に力を入れないと閉じられないか確認。
  4. 発音・会話
    →言葉がこもっていないか、発音に歯の位置が影響していないか。
  5. 呼吸の様子
    →鼻で呼吸しているか、いつも口が開いていないか。

このような観察を通じて、早期に違和感を見つけることができます。
気になる点が複数ある場合は、小児矯正に詳しい歯科医師への相談をおすすめします。

矯正を始める最適なタイミングはいつ?

子どもの矯正は、「乳歯列期」「混合歯列期」「永久歯列期」の3つの時期で治療目的が異なります。一般的に、あごの成長を利用できる「混合歯列期(6?12歳)」が最も効果的ですが、癖や呼吸に関わる問題がある場合はそれ以前の治療が望ましいこともあります。

6~12歳の混合歯列期が、矯正を始める最適な時期です。

時期 年齢の目安 主な治療目的 治療内容の例
乳歯列期 3〜6歳 口腔習慣の改善・顎の発達誘導 指しゃぶり改善、筋機能訓練
混合歯列期 6〜12歳 顎の成長誘導・歯並びスペース確保 拡大床・マウスピース型矯正
永久歯列期 12歳以降 歯の移動による見た目と噛み合わせの改善 ワイヤー矯正、マウスピース矯正
  • 成長期を逃すと、あごの誘導が難しくなり、治療期間や費用が増えることがある。
  • 永久歯がそろう前に、歯科で一度チェックを受けるのが理想。

矯正を始めないとどうなる?放置のリスクとは?

矯正が必要な状態を放置すると、「見た目の問題」だけではなく、噛み合わせの悪化・虫歯や歯周病の進行・発音や呼吸への影響・顔のゆがみ・心理的コンプレックスなど、さまざまな悪影響が広がります。

子どもの時期は、成長とともに骨格や筋肉が発達するため、放置してしまうと歯並びの乱れが定着して大人になってから治すのが難しくなることも少なくありません。

そのため、「見た目はそこまで悪くないから」と放っておくのではなく、機能的な異常を早めに見つけて治療につなげることが、将来の口腔健康を守るカギです。

放置は「歯並び」だけでなく「健康や自信」にも悪影響を及ぼします。

放置による主なリスクとその具体例

リスクの種類 内容 放置による影響の具体例
① 清掃不良による虫歯・歯周病のリスク上昇 歯が重なって磨き残しが増え、歯垢がたまりやすくなる 歯肉炎→歯周病に進行、口臭の悪化、将来の歯の喪失リスク
② 噛み合わせの不良による咀嚼トラブル 片側だけで噛む・強く当たる歯がある 顎関節症、肩こり、頭痛、胃腸負担など全身症状
③ 発音・呼吸への影響 前歯や舌の位置異常により空気の通り道が変化 サ行・タ行が発音しづらい、口呼吸が定着して風邪をひきやすい
④ 顔の骨格や筋肉のバランス崩れ 偏った噛み方・頬杖などが原因で片側だけ発達 顔の左右差、顎のゆがみ、姿勢の悪化
⑤ 心理的なコンプレックス形成 歯並びが悪いことで笑顔や会話を避けるようになる 自信喪失、対人関係への影響、将来の自己肯定感低下

これらのリスクは、成長に伴って悪化することが多いため、気づいた時点で専門医に相談するのが望ましいです。

1. 歯の健康を損なうリスク 歯垢の蓄積と歯肉の炎症

歯が重なっている部分やねじれている歯列では、歯磨きが届きにくく、歯垢がたまりやすい状態になります。歯垢には虫歯菌や歯周病菌が含まれており、放置すると次のような悪循環が起こります。

歯垢がたまる

→ 毎日の歯磨きで除去しにくい
→ 炎症が進行して歯ぐきが腫れる
→ 出血や口臭が起こる

このサイクルを繰り返すうちに、永久歯が生えそろう頃には歯周病の初期症状(歯ぐきの腫れや出血)が現れることもあります。子どものうちに矯正で歯並びを整えることで、清掃性が改善され、虫歯・歯周病予防にもつながります。

2. 噛み合わせのずれによる顎関節・姿勢への影響

噛み合わせが悪いと、一部の歯だけに強い力が集中してしまいます。この状態が長く続くと、顎の関節や咀嚼筋(そしゃくきん)に負担がかかり、次のような症状が現れやすくなります。

  • 口を開けるとカクッと音がする
  • 顎やこめかみが痛む
  • 肩こりや首のこわばりがある
  • 噛むときに片側だけ使う癖がつく

さらに、片側噛みが習慣化すると顔の骨格に左右差が生まれ、姿勢バランスにも影響します。成長期にこのバランスが崩れると、成人後の矯正では修正が難しくなるため、早期の改善が望まれます。

3. 発音・呼吸への悪影響 口呼吸や舌の位置異常

歯列が乱れていると舌の位置が不安定になり、正しい発音や呼吸の妨げになります。特に次のようなケースは注意が必要です。

  1. 上の前歯が出ている(出っ歯)
    → サ行がうまく発音できない
  2. 前歯が開いている(開咬)
    → 空気が漏れて発音が不明瞭になる
  3. 下顎が前に出ている(受け口)
    → 舌の動きが制限され、発音がこもる
  4. 口呼吸の習慣
    → 乾燥で口腔内の細菌が繁殖しやすく、免疫低下の原因に

呼吸と発音は成長中の脳や筋肉の発達にも関わります。そのため、単なる「歯並びの見た目」ではなく、機能的な発達を守るための矯正が必要となるのです。

4. 顔貌(がんぼう)・骨格への影響:見た目だけでなく機能のゆがみ

噛み合わせが悪いと、左右の筋肉バランスや骨の成長に差が生じます。その結果、顎が片方だけ発達したり、口元が出て見えたりすることがあります。特に子どもの骨は柔らかく、日常的な癖(頬杖・うつ伏せ寝など)によっても影響を受けやすいです。

次のような変化が見られたら要注意です。

  • 顔が左右非対称に見える
  • 片方のほおだけが膨らんでいる
  • 笑ったときに歯ぐきの見え方が左右で違う
  • 下あごが前後にずれている

このような状態が長く続くと、骨格のゆがみが定着し、将来的に咀嚼機能や発音に支障が出る可能性があります。

5. 心理的な影響 見た目のコンプレックスから自信喪失へ

小学校高学年〜中学生になると、友達との見た目の比較や写真撮影の機会が増えます。歯並びが気になって「笑えない」「話すのが恥ずかしい」と感じる子も多く、これが自己肯定感の低下や対人関係のストレスにつながるケースもあります。

とくに思春期は心が繊細で、
「笑うと歯が見えるのが嫌」
「マスクを外したくない」
といった悩みが深刻化しやすい傾向があります。
矯正を通して歯並びを整えることは、心の健全な成長を支えることにもつながるのです。

6. 成長期を逃すと治療が複雑化する可能性も

成長中に放置すると、あごの骨が硬くなってからでは動かせる範囲が限られてしまいます。子どもの時期にあごの成長誘導を行えば、比較的簡単な装置で対応できる場合も、大人になってからだと「抜歯」や「外科的手術」が必要になることもあります。

治療の難易度の比較

時期 あごの柔軟性 使用する装置 負担 治療期間
成長期(6〜12歳) 高い(成長誘導が可能) 拡大床・マウスピース型 小さい 約1〜2年
成人期(20歳〜) 低い(骨が固まる) ワイヤー矯正・外科矯正 大きい 約2〜4年

「まだ様子を見よう」と後回しにするほど、治療の難易度・期間・費用のすべてが増していきます。一見軽い不正咬合でも、早期発見・早期対応が将来の大きな負担を防ぐことにつながります。

歯科医院でどのように判断してもらえるの?

矯正専門の歯科では、見た目の歯並びだけでなく、噛み合わせ・あごの骨格・筋肉のバランス・口腔習慣を含めて総合的に診断します。X線撮影や模型分析を行い、子どもの成長に合わせた最適な治療計画を立ててくれます。

歯科では「見た目+機能+成長」の3要素をもとに総合診断します。

歯科での主な診断項目

  1. 歯並びのずれ・重なり具合
  2. 上下のあごの位置関係(出っ歯・受け口など)
  3. 呼吸や舌の動きの癖
  4. 顔のバランス(正面・横顔)
  5. レントゲン・歯型を用いた成長分析

診断後には、「今は経過観察でよい」「早期治療が必要」「永久歯が生えてからで十分」など、お子さんの成長ステージに応じたアドバイスを受けられます。

まとめ

気になるサインがあれば早めの相談を

子どもの矯正が必要かどうかは、見た目だけで判断するのは難しく、噛み合わせ・癖・呼吸・成長の総合的な視点が必要です。家庭でできるチェックを行い、不安があれば早めに歯科医院に相談することが、将来の歯の健康と美しい笑顔につながります。

家庭チェックと早期相談が、矯正成功の第一歩です。

まとめのポイント

  1. 矯正が必要かは「噛み合わせ」「口腔習慣」「成長」で判断。
  2. 早期判断で負担の少ない治療が可能。
  3. 自宅チェック+専門医相談がベスト。
この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック