
オールオン4の寿命はどのくらいですかと聞かれることがあります。インプラントの上部構造の寿命や人工歯根が10~15年と言われますが、メンテナンスをしっかり受けるか否かで、長くなったり反対に短くなることがあります。オールオン4の構造や、メリットやデメリット、メンテナンスでどのようなことをするのかなど詳しく説明いたします。
オールオン4とは
オールオン4(All-on-4)とは、総入れ歯が必要な方や多くの歯を失った方に対するインプラント治療法の一つで、4~6本のインプラントで片顎全ての人工歯を支えるのが特徴です。すべての歯をインプラントで支えるには多くの本数が必要ですが、オールオン4は奥のインプラントを斜めに埋め込む特殊な方法を用いることで、骨の少ない方でもインプラント治療が可能になるケースがあります。
どんな方に適しているのか
オールオン4が適している方は、このような方です。
- 多くの歯を失っている方
- 総入れ歯が合わずに悩んでいる方
- 骨が少なく通常のインプラントが難しい方
- 短期間でしっかり咬める歯を取り戻したい方
オールオン4のメリット
オールオン4のメリットを挙げてみましょう。
- 最小4本などの少ない本数で全体の義歯を支えられる
- 手術当日に仮歯が入れられ咬合ができる
- 骨の少ない人でも対応可能なことがある
- 入れ歯よりもしっかり咬めて見た目が自然である
- 治療期間が比較的短く、身体への負担が少ない
オールオン4のデメリット
では、逆にオールオン4のデメリットを挙げてみましょう。
- 自費治療に該当するため費用が高額である
- 手術による細菌感染のリスクがあり定期的なメンテナンスが必須である
- すべて連結しているため、1本のトラブルが全体に影響する
- 骨の状態や全身の健康によっては適応外となる場合もある
オールオン4と他の義歯治療の違いについて
インプラントをもとに多くの歯を入れるオールオン4ですが、他の義歯治療として、ブリッジや入れ歯があります。
治療法 | 寿命の目安 | 特徴・補足説明 |
---|---|---|
オールオン4 | 約10〜15年 | 安定性が高く自然な見た目。長期的に使用できる。 |
ブリッジ | 約7〜8年 | 連結した人工歯で自然な見た目。支台歯の負担が大きい。 |
入れ歯 | 約3〜7年 | 取り扱いや毎日のケアによって寿命が左右されやすい。 |
オールオン4の寿命
オールオン4の寿命は一般的に10〜15年以上とされています。
インプラント自体の寿命
オールオン4は、チタン製のインプラント体を顎骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する仕組みです。チタンは非常に耐久性のある素材で生体親和性が高く、骨と結合しやすいため、インプラント自体は10年以上保つことが多いです。
上部構造(人工歯)の寿命
上部構造はセラミックやアクリルで作られ、噛む力や歯ぎしりなどによって摩耗や破損が起こります。平均的には5~10年ほどでメンテナンスや修理が必要になることもあります。
オールオン4の寿命を延ばす方法は?
オールオン4の寿命を延ばす方法については、オールオン4後のケア及び生活習慣が重要になります。
毎日の丁寧なセルフケア
オールオン4も天然歯と同じように、毎日の歯磨きとお手入れが基本です。インプラントと歯ぐきの境目には汚れがたまりやすく、インプラントの周囲で起こる歯周病のような病気(インプラント周囲炎)になるリスクが高くなります。専用の歯ブラシやワンタフトブラシ、歯間ブラシ、フロス、口腔洗浄器などを使って清掃しましょう。夜は唾液の分泌が減り、細菌が増えやすくなるため、就寝前のケアは特に重要です。
口腔洗浄器とは?
口腔洗浄器とは、高圧の水流を使用して、歯間や歯周ポケットの汚れを取り除く器具です。ドルツ、ウォーターピック、ジェットウォッシャーという商品を見かけたことはありませんか。口腔洗浄器には据え置きタイプとハンディタイプがあり、外か家のどちらで使用するかにより、自分に合った器具を探せます。使い始めの頃は水圧の強さを一番低くしておき、慣れてくればブラッシング後に使用して、残った食べかすや歯垢を除去しましょう。
定期的なメンテナンス
3〜6か月に1回くらいの間隔で行う歯科医院での定期的なチェックとクリーニングは欠かせません。定期検診では、歯科医師がインプラントの状態、噛み合わせ、周囲の歯ぐきの健康状態を確認します。その段階で早期にトラブルを発見できれば、オールオン4の動揺などの大きな問題になる前に対処できます。特にインプラント周囲炎が最も警戒しなければならない細菌感染で、初期段階では自覚症状がないため、プロのチェックが必要です。
インプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲にある歯茎や骨に炎症が起きる病気です。歯垢を落としきれなければ、歯垢の中にある歯周病菌が増殖します。歯周病菌の感染が起きると歯ぐきが腫れて出血したり、進行するとインプラントを支える骨が溶けてしまいます。歯周病と似た症状になり、放置するとインプラントが抜け落ちる可能性もあるため、早期の発見と治療が重要です。
ナイトガードの使用
無意識下で行う強い食いしばりや歯ぎしりは、インプラントにとって大きな負担になります。就寝中に無意識にかかる力は自分の体重の2倍以上になることもあります。その咬合力により、オールオン4の人工歯や土台にヒビやゆるみ、破損が起きてしまいます。ナイトガードと呼ばれるマウスピースを作製して装着して就寝することで歯にかかる力を分散できます。
食生活の見直し
固すぎる食べ物は人工歯を壊す原因になります。氷や煎餅をガリガリ噛んだり、骨つき肉をかじるということが好きという方は、どうしてもインプラントや上部構造の寿命を縮めるリスクがあります。なるべくバランスのよい食事を心がけ、栄養面でも骨や歯ぐきを健康に保つことが重要です。
喫煙習慣の改善
喫煙習慣があると、ニコチンや一酸化炭素などの有害物質は、白血球の働きを弱めて血流を悪化させるため、体内の免疫細胞が十分に機能しにくくなります。インプラントと骨が結合するのを妨げたり、感染に対する防御力が低下して免疫力が下がることで、インプラント周囲炎を引き起こしやすくなります。タバコを吸わない人と比較すると、治癒力や免疫力ともに劣るため、インプラントの寿命を長く保つには禁煙が重要なはその理由からです。
糖尿病などの全身疾患
糖尿病などの全身疾患にかかり血糖コントロールが難しい方が、オールオン4を行うと、このようなことが起こり得ます。
- 免疫力の低下により感染しやすくなる
- 血流障害で骨や歯茎の治癒が遅れる
- 炎症が長引きやすく、インプラント周囲炎のリスクが高まる
治癒力や免疫力が低下しており、インプラントの定着や維持を妨げ、寿命を縮める原因となります。治療前からきちんとコントロールすることができれば、インプラントの寿命に好影響を与えます。
オールオン4を長持ちさせるための歯科医院の選び方
オールオン4を長持ちさせるためには、オールオン4を行う歯科医院の選び方も大切です。
オールオン4治療の実績が豊富
通常のインプラントとは異なるため、専門的な知識と実績が必要と言えます。症例数が多い歯科医院は様々な口腔状態に対応した経験があるため、安心感があります。
CTやシミュレーション設備が整っている
オールオン4は骨の量が限られた患者にも行える治療ですが、精密な術前診断が不可欠な治療です。歯科用CTや3Dシミュレーションソフトがある医院では、骨の状態や神経位置などを正確に把握し、安全で長持ちする手術が可能です。
メンテナンス体制が整っている
オールオン4は術後の定期的なメンテナンスが寿命を左右します。メンテナンスの頻度やどのような内容か、歯科衛生士の在籍など、治療後のフォローアップが丁寧か確認しましょう。
総合的な治療計画を立ててくれる
歯周病や咬み合わせ、全身疾患なども考慮した包括的な治療計画を提案してくれる医院を選びましょう。オールオン4は長期的視点が大切で、患者さんの状態によってはそれ以外の治療方法も提案してくれる医院は信頼できます。
保証制度や治療費の明確さ
万が一のトラブルに備え、保証期間や治療計画、及び治療費用が明確な医院がベストです。追加費用の有無や治療後の対応まで含めて、わかりやすく説明してくれるかどうかも重要です。
患者さんとのコミュニケーションを重視
歯科医師がわかりやすく丁寧に説明してくれるかどうかも重要です。一方的におしつける治療ではなく、患者の要望や不安に寄り添ってくれるかどうかという点です。
まとめ
オールオン4は、少ない本数のインプラントで、しっかり咬めて自然な見た目であり、しっかりメンテナンスすれば10年〜15年以上使える信頼性の高い治療法です。寿命を延ばすには、正しいケアや、定期的な通院、生活習慣の見直しを行い、治療して終わりではなく、治療後も長く手入れをして保とうと意識することが大切です。従来の入れ歯に不満がある方や、総入れ歯に抵抗がある方にとって魅力的な治療ですので、気になる方は、歯科医院でカウンセリングを受けることをおすすめします。