口腔習癖は歯並びに影響しますか?
指しゃぶり、舌で歯を押す癖、唇を噛む癖、爪噛み、口呼吸などの「口腔習癖」は、長く続くと歯並びや噛み合わせに影響を与えることがあります。特に成長期のお子さんの場合、歯や顎の発育途中に同じ方向から力がかかり続けることで、出っ歯、開咬、すきっ歯、受け口、歯列の乱れなどにつながる可能性があります。
もちろん、癖があるからといって必ず歯並びが悪くなるわけではありません。しかし、毎日何気なく続けている癖ほど、歯や顎に少しずつ影響を与えやすいものです。早めに気づいて対策することで、歯並びの悪化を防げる場合もあります。
この記事では、口腔習癖の種類や歯並びへの影響、歯科医院での診断・治療方法についてわかりやすくご説明します。
この記事はこんな方に向いています
- お子さんの指しゃぶりや口呼吸が気になっている方
- 舌で前歯を押す癖や唇を噛む癖がある方
- 歯並びが悪くなった原因を知りたい方
- 口腔習癖と矯正治療の関係を知りたい方
- 子供のうちに歯並びの悪化を予防したい方
この記事を読むとわかること
- 口腔習癖とはどのようなお口の癖なのか
- 指しゃぶり、舌癖、口呼吸などが歯並びに与える影響
- 口腔習癖によって起こりやすい不正咬合の種類
- 歯や顎、歯肉、顎関節に起こる可能性のあるトラブル
- 口腔習癖に対する診断や治療、家庭での注意点
子供の歯並びに影響しやすい口腔習癖
指しゃぶりや唇を噛む行動は、子供たちに良くある癖ですが、これらの行為は歯並びや顎の発達に影響を及ぼします。
1. 指しゃぶり
指しゃぶりは吸指癖(きゅうしへき)ともいい、幼児期の子供に多く見られる癖です。親指を加えて吸引する癖を拇指吸引癖(ぼしきゅういんへき)といい、指しゃぶりの中でもこれが一番多いと言われています。
指しゃぶりが長期間続くと、指で上顎や下顎の前歯を前方に押し出して、出っ歯(上顎前突)や開咬の原因になることがあります。また、上顎の成長を妨げて上顎の歯のアーチが狭くなる歯列狭窄などの噛み合わせの問題を引き起こす可能性があります。
2. 唇を噛む・唇を吸い込む
ストレスや不安から、無意識に唇を噛んだり吸い込んだりする人がいます。唇を噛むと前歯に圧力が加わり、上の前歯は前方に、下の前歯は内側に傾斜して、出っ歯や受け口になったり、過蓋咬合を引き起こすこともあります。長期にわたると、唇の形にも影響を及ぼすことがあります。
3. 舌癖(舌突き習癖)
舌癖は、舌を歯の間や口腔の特定の場所に押し付ける癖を指します。前歯に対して歯列を前に押し出す舌癖を続けていると、上顎前突や開咬、上下の歯の噛み合わせが捻じれた交叉咬合になる場合があります。
舌を前に突き出す癖があると、開咬や空隙歯列(すきっ歯)の原因にもなり、歯並びの問題だけでなく、発音にも影響を与えることがあります。
4. ペン噛みや爪噛み
ペンや爪を噛む癖は、主にストレスや集中力の維持のために、無意識に行われます。これらの習慣は、歯の損傷や歯列不正を引き起こすリスクを高めます。
特に、硬い物を長期間噛むことは、歯の摩耗や歯のひび割れの原因となることがあります。
5. 口呼吸
私たちは通常は鼻呼吸を行いますが、口から呼吸することを口呼吸と呼び、様々な原因で口呼吸になっている子供がいます。口呼吸をしていると口が開きっぱなしになるため、お口の中が乾燥して、口内に細菌が繁殖して虫歯になりやすくなります。
また、歯並びにも影響が出て、口呼吸によって舌の位置が下がってしまうことで、舌の力が常に下あごに加わり、受け口になりやすくなります。同時に唇の筋肉の発達が抑制されることから、出っ歯にもなりやすくなります。
これらの癖は、子供の歯や顎の発育に影響を及ぼすため、適切な対策を早めに行うことが重要です。
口腔習癖は歯並びにどんな影響を与える?
口腔習癖は子供の歯並びや顎の健康に影響を及ぼすことがあります。こうした癖が歯に与える影響は、その種類によって異なります。例えば、指しゃぶりは上顎の前へ押し出し、結果として出っ歯の原因となります。また、唇を噛む習慣は下顎の発育を妨げ、不正咬合のリスクを高めることが知られています。
どんな癖がどんな歯並びに影響するか
| 口腔習癖 | 内容 | 影響しやすい歯並び・噛み合わせ | 起こりやすい影響 |
|---|---|---|---|
| 指しゃぶり | 親指や指を吸う癖 | 出っ歯、開咬、歯列狭窄 | 前歯が前に押し出されたり、上下の前歯が噛み合わなくなったりすることがあります。 |
| 唇を噛む・吸い込む癖 | 下唇や上唇を噛む、吸い込む癖 | 出っ歯、受け口、過蓋咬合 | 前歯に継続的な力がかかり、歯の傾きや噛み合わせの深さに影響することがあります。 |
| 舌癖 | 舌で前歯を押す、舌を歯の間に出す癖 | 開咬、出っ歯、すきっ歯、交叉咬合 | 舌の力で前歯が押され、歯と歯の間にすき間ができたり、前歯が噛み合わなくなったりします。 |
| 爪噛み・ペン噛み | 硬いものを前歯や奥歯で噛む癖 | 歯のねじれ、歯列の乱れ、噛み合わせのずれ | 特定の歯に強い力がかかり、歯の移動や摩耗、欠け、ひび割れの原因になることがあります。 |
| 口呼吸 | 鼻ではなく口で呼吸する癖 | 出っ歯、受け口、開咬、歯列の乱れ | 舌の位置が下がり、唇や舌の筋肉バランスが崩れることで、歯並びや顎の発育に影響することがあります。 |
| 頬を噛む癖 | 頬の内側を繰り返し噛む癖 | 噛み合わせのずれ、歯列の乱れ | 頬の粘膜を傷つけるだけでなく、噛み合わせの違和感や歯の位置の乱れにつながることがあります。 |
| 歯ぎしり・食いしばり | 無意識に歯をこすり合わせる、強く噛みしめる癖 | 噛み合わせのずれ、歯の摩耗、顎関節への負担 | 歯がすり減ったり、顎関節に負担がかかったりして、顎の痛みや噛み合わせの違和感につながることがあります。 |
1. 歯列の乱れ
- 持続的に行われるお口の周りの癖は、歯が正常な位置で成長するのを妨げ、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。
- 特に指しゃぶりや舌の癖は、前歯を前方に押し出すことで、不正咬合や出っ歯を引き起こす原因となります。
2. 歯の移動や捻じれ
- 唇を噛む、頬かみ、舌突きなどの癖が無意識で行われると、特定の歯に圧力をかけ続け、歯の移動や捻じれを引き起こすことがあります。
- これにより、歯並びの乱れや噛み合わせの問題が生じる可能性があります。
3. 歯の摩耗と損傷
- ペン噛みや爪噛みのように、硬いものを噛む習慣は、歯の表面の摩耗や損傷を引き起こすことがあります。
- これは、歯のエナメル質が薄くなったり、割れや欠け、ひびの原因となります。
4. 顎関節への影響
- 一部の口腔習癖は、顎関節に大きなストレスをかけ、顎関節症のリスクを高めることがあります。
- これにより、顎の痛み、顎の動きに伴うクリック音、または口の開閉がしにくくなるなどの症状が現れることがあります。
5. 歯肉への影響
- 頬かみの癖は、頬の内側の粘膜の損傷や炎症を引き起こす可能性があります。
- 同じ場所ばかり繰り返し噛んでいると、その部分に潰瘍ができてしまう可能性もあります。
これらの癖の影響は、子供の口腔健康にとって深刻な問題となるため、早期に適切な予防策や治療法を行いましょう。
子供の口腔習癖で注意したいこと
子供の口腔習癖は、成長とともに自然に減っていくこともありますが、長く続く場合は歯並びや顎の発育に影響することがあります。特に、指しゃぶり、口呼吸、舌で前歯を押す癖、唇を噛む癖などは、前歯の位置や噛み合わせに関係しやすいため注意が必要です。
ただし、癖を見つけたからといって、すぐに強く叱ったり無理にやめさせたりするのはおすすめできません。ストレスや不安が原因で癖が出ていることもあるため、まずは「どんな場面で癖が出るのか」を観察することが大切です。
例えば、眠いとき、テレビを見ているとき、緊張しているときなど、癖が出やすいタイミングを知ることで、声かけや環境づくりがしやすくなります。お子さん本人を責めるのではなく、少しずつ意識できるようにサポートしてあげましょう。
また、前歯が噛み合わない、口がいつも開いている、発音が気になる、歯並びが変わってきたように見える場合は、早めに歯科医院で相談することが大切です。癖の改善だけで済む場合もあれば、口腔筋機能訓練や小児矯正が必要になる場合もあります。
口腔習癖の診断と治療
口腔習癖には、爪噛み、唇や頬の内側を噛む、舌の突き出し、歯ぎしり(ブラキシズム)など、無意識に行われる癖が含まれます。これらの習慣は、時にストレスや不安が原因で発生することがありますが、歯や口の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
診断
口腔習癖の診断は、通常、歯科医師や口腔外科医による口腔検査と患者さんの治療歴の評価によって行われます。患者が特定の習慣に気づいていない場合、歯科医は歯や顎の異常な摩耗、口腔内の傷、またはその他の口腔内の問題を指摘することで習慣の存在を確認することがあります。
治療
治療法は、習慣の種類やその原因によって異なります。以下に一般的な治療法をいくつかご紹介します。
1. 指しゃぶり
幼い時期は無理にやめさせないで見守ることも大切です。
ストレスや不安が原因の場合、屋外で遊ばせたり運動でストレスを発散させ、他のものに注意を向けさせるようにしましょう。
2. 舌を突き出す癖
口腔筋機能訓練法(MFT)によってお口の周辺の筋肉のバランスを整えます。MFTは、食べる(咀嚼)、飲み込む(嚥下)、発音、呼吸などの時の舌や口唇の位置の改善を目的とした簡単なトレーニングです。
3. 口呼吸
口輪筋などのお口周りの筋肉の機能訓練をおこないます。
4. 歯ぎしり、食いしばり
歯ぎしりや顎を強く噛む癖がある場合は、ナイトガードやマウスピースの使用が推奨されます。これらは歯ぎしりや食いしばりから歯を保護し、顎の筋肉にかかる圧力を軽減するのに役立ちます。
口腔習癖を短期間でやめることが出来ると、歯や口に起こっていた異常は自然に治ることが多いです。長期間に渡って口腔習癖が続いていた場合は、歯や口に起こっている以上は自然には治らないため、矯正治療などが必要になります。
Q&A
Q1. 口腔習癖とは何ですか?
口腔習癖とは、指しゃぶり、舌で歯を押す、唇を噛む、爪を噛む、口呼吸などのお口まわりの癖のことです。無意識に行っていることも多く、長く続くと歯並びや噛み合わせに影響する場合があります。
Q2. 指しゃぶりは何歳までなら様子を見てもいいですか?
幼児期の指しゃぶりは自然に減っていくことも多いため、すぐに強くやめさせる必要はありません。ただし、4歳以降も頻繁に続く場合や前歯の噛み合わせに変化がある場合は、歯科で相談すると安心です。
Q3. 舌で前歯を押す癖は歯並びに影響しますか?
舌で前歯を押す癖が続くと、前歯が前に出たり、上下の前歯が噛み合わない開咬の原因になることがあります。発音や飲み込み方にも関係するため、必要に応じて口腔筋機能訓練を行うことがあります。
Q4. 口呼吸は歯並びが悪くなる原因になりますか?
口呼吸が続くと、舌の位置が下がり、唇や頬、舌の筋肉バランスが崩れやすくなります。その結果、出っ歯、受け口、開咬、歯列の乱れなどにつながることがあります。
Q5. 口腔習癖をやめれば歯並びは自然に治りますか?
癖が短期間で改善されれば、軽い変化は自然に整うこともあります。ただし、長期間続いて歯並びや顎の成長に影響が出ている場合は、矯正治療が必要になることがあります。
まとめ
口腔習癖は、指しゃぶり、舌で歯を押す癖、唇を噛む癖、爪噛み、口呼吸など、お口まわりで無意識に行われる癖のことです。短期間であれば大きな問題にならないこともありますが、長く続くと歯並びや噛み合わせ、顎の発育に影響する場合があります。
特に成長期のお子さんは、歯や顎が発育途中のため、癖による力を受けやすい時期です。出っ歯、開咬、すきっ歯、受け口などにつながることもあるため、気になる癖が続いている場合は早めに歯科医院で相談しましょう。
癖を無理に叱ってやめさせるのではなく、原因を見つけて少しずつ改善していくことが大切です。必要に応じて口腔筋機能訓練や矯正治療を行うことで、歯並びやお口の機能を整えやすくなります。
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