虫歯

歯磨きしても虫歯になる5つの理由と対策

歯磨きしても虫歯になる5つの理由と対策

「毎日しっかり歯を磨いているのに、なぜ虫歯になってしまうの?」
これは歯科医院でよく耳にする患者さんの疑問です。実際に、毎日欠かさず歯磨きをしているにもかかわらず、虫歯に悩まされている方が大勢おられます。ここでは、歯磨きしても虫歯になってしまう理由と予防法についてご説明します。

虫歯のメカニズム 歯を蝕む”酸”の正体

虫歯になる原因を理解するには、まずお口の中の環境について知る必要があります。私たちの口の中には多くの細菌が存在しており、その中の一部が虫歯の原因となる細菌(総称して虫歯菌と呼ばれます)、歯周病の原因菌(歯周病菌)などです。

虫歯菌は砂糖を主な栄養源としており、それを代謝する過程で酸を産生します。この酸が歯のエナメル質(歯の表面を覆う硬い組織)や象牙質(エナメル質の内側にある組織)を溶かし、虫歯を引き起こします。

虫歯の進行には以下のような段階があります。

  1. 初期段階:エナメル質の表面が脱灰(ミネラルが溶け出す)
  2. 中期段階:エナメル質内部まで穴があく
  3. 後期段階:象牙質にまで穴があき、痛みを感じる
  4. 末期段階:歯髄(神経)に達し、激しい痛みを伴う

このプロセスは、口腔内の酸性度(pH)と密接に関連しています。通常、唾液の働きによって口腔内のpHは中性(約7.0)に保たれていますが、食事や飲み物の摂取によってpHが一時的に低下して酸性化します。pHが5.5を下回ると、エナメル質の脱灰が始まります。

虫歯予防の基本は、この酸を産生する虫歯菌を取り除くこと、そして口腔内のpHを適切に維持することにあります。ここで重要な役割を果たすのが、歯磨きと唾液です。

歯磨きの落とし穴

歯

歯磨きで見落としがちな5つのポイントについてご説明します。

1. 磨き残し

歯磨きをしていても虫歯になる最も一般的な理由は、磨き残しがあるということです。特に以下の部位は磨き残しが起こりやすいため注意が必要です。

  • 奥歯の溝
  • 歯と歯の間
  • 歯と歯ぐきの境目
  • 歯並びの悪い部分

これらの場所は歯ブラシの毛先が届きにくく、食べカスや細菌が蓄積しやすいのです。歯並びが悪い場合、さらに磨き残しのリスクが高まります。

2. 歯磨き時間

「しっかり磨いている」と思っていても、実際の歯磨き時間は1分未満であるという研究があります。歯科医師が推奨する適切な歯磨き時間は3分以上で、時間をかけて丁寧に磨くことが重要です。

3. 歯磨きのタイミング

食事直後は口腔内が酸性に傾いているため、この状態で歯を磨くとエナメル質を傷つける可能性があります。食後30分程度経ってから歯を磨くのが理想的です。それまでの間は、水やお茶でうがいをして口腔内の食べ物のカスなどの汚れを洗い流しましょう。

4. 歯ブラシの選び方

歯ブラシは「硬さ」「大きさ」「毛先の形状」など、様々な種類があります。ご自分の口腔状態に合っていない歯ブラシを使用していると、歯を効果的に磨くことができません。また、硬すぎる歯ブラシを使用すると、歯ぐきを傷つけたり、歯の表面をすり減らして知覚過敏を起こす恐れがあります。

5. 歯磨き以外の要因

歯磨きだけでなく、毎日の食生活も虫歯のリスクに大きく影響します。糖分の多い食品や飲料を頻繁に摂取すると、虫歯菌の活動が活発になります。また、唾液には口腔内を中性に保つ作用があるため、唾液の分泌が少ないと虫歯のリスクが高まります。

効果的な歯磨きテクニック

歯ブラシ

正しい歯磨きテクニックを身につけることで、虫歯予防の効果が大幅に向上します。以下に、歯科医師が推奨する基本的な歯磨き方法をご紹介します:

  1. 歯ブラシの持ち方・・鉛筆を持つように軽く握り、力を入れすぎないようにします。
  2. 歯ブラシの当て方・・歯ブラシの毛先を歯と歯ぐきの境目に45度の角度で当てます。
  3. 動かし方・・小刻みに振動させるように動かし、一か所につき10回程度磨きます。
  4. 磨く順序
    ・奥歯の外側から前歯へ
    ・奥歯の内側から前歯へ
    ・奥歯の噛み合わせ面
  5. 注意点
    ・力を入れすぎないよう注意しましょう。
    ・歯ブラシを横に動かす「横磨き」は避けましょう。
    ・歯と歯の間は、デンタルフロスや歯間ブラシを使用しましょう。

また、電動歯ブラシを使用すると、より効果的に歯垢を除去できる場合があります。特に、手先があまり器用ではない方や手首、腕を傷めている方、歯周病のリスクが高い方におすすめです。

虫歯予防の新常識

歯

歯磨きだけでなく、以下の方法を組み合わせることで、より効果的に虫歯を予防できます:

  1. フッ素の活用・・フッ素入りの歯磨き粉を使用したり、歯科医院でフッ素塗布を受けることで、エナメル質を強化できます。
  2. シーラント治療・・奥歯の溝にシーラント(樹脂)を塗布することで、虫歯になりやすい部分を保護します。
  3. 食生活の改善
    ・糖分の摂取を控える
    ・野菜や乳製品など、歯に良い食品を積極的に摂取する
    ・間食の回数を減らし、決まった時間に食事をとる
  4. 唾液の分泌を促進
    ・十分な水分摂取
    ・よく噛む食事
    ・ガムを噛む(キシリトール入りがおすすめ)
  5. 定期的な歯科健診・・半年に1回程度、歯科医院で健診を受けることで、初期の虫歯を発見し、早期治療につなげることができます。
  6. ストレス管理・・ストレスは唾液の分泌を減少させ、免疫機能を低下させます。適度な運動や十分な睡眠など、ストレス管理も虫歯予防に効果的です。

まとめ

虫歯予防は、単に歯を磨くだけでは不十分で、虫歯になってしまうことがあります。正しい歯磨き方法を身につけ、定期的に歯科健診を受け、バランスの取れた食生活を心がけるなど、総合的なアプローチが必要です。

また、年齢とともに唾液の分泌量が減少したり、服用している薬の影響で口腔内が乾燥しやすくなったりする場合もあります。疑問や不安がある場合は、ぜひ歯科医院にご相談下さい。

この記事の監修者
医療法人真摯会 梅田クローバー歯科クリニック
院長 久野 喬

2014年 松本歯科大学卒業卒業。日本障害者歯科学会 認定医。ACLS講習終了。日本口腔インプラント学会。日本小児歯科学会。日本接触嚥下リハビリテーション学会。

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梅田クローバー歯科クリニック

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック